2018 Fiscal Year Annual Research Report
〈身体=違和〉の哲学――実存主義的現象学からトランスジェンダーの現象学へ
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18J40079
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤高 和輝 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | トランスジェンダー / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用一年目にあたる2018年度の研究方針は、トランスジェンダー現象学の研究で著名なゲイル・サラモン氏の著書 Assuming a Body: Transgender and Rhetorics of Materiality (2010) の翻訳を中心として、トランスジェンダー現象学を日本の学術界に導入することだった。 まず翻訳に関しては、ほぼ完成し、2019年5、6月ごろに出版できる状況であり、研究の進展は順調である。 また、これに関連して、トランスジェンダー現象学(及び、それに対する実存主義的現象学の影響)に関する研究についても研究計画で当初想定した以上に進めることができた。日仏女性研究学会の交流セミナー(2018年6月9日)では、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの思想とトランスジェンダー現象学の思想的関係について、立命館で行われたワークショップ「ジェンダーと身体」(2019年1月12日)ではモーリス・メルロ=ポンティの哲学とトランスジェンダー現象学の関係について発表し、これらの発表はそれぞれ、2019年度に論文化する予定である。『現代思想』(青土社)にも、トランスジェンダー現象学に関する論文を二本寄稿した。とくに、『現代思想』の二月号「男性学特集」に寄稿した論文「とり乱しを引き受けること――男性アイデンティティとトランスジェンダー・アイデンティティのあいだで」は反響が大きく、朝日新聞(2019年2月23日)の論壇時評「今月の三点」に選出された。さらには、國學院大學で行われたシンポジウム「トランスジェンダーの哲学」(2019年3月4日)では、海外のトランスジェンダー現象学の研究者と意見交流を行うことができた。 総じて、研究計画書の年次計画で記していた計画よりも、大幅に進展したと言える。また、各種の発表や論文を通して、本研究の社会的意義を改めて実感することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
もともとの計画では、初年度はアメリカ合衆国で発展しているトランスジェンダー・スタディーズの基礎研究を遂行する予定であり、二年目以降にその現象学的実存主義との影響関係を研究する予定であったが、結果としては、Gayle Salamonの著書の翻訳そのものはほぼ完了し、その著書が位置付けられるトランスジェンダー・スタディーズの歴史的発展についての基礎研究も当初より進展し、二年目に計画していた研究の一部に着手できたことが大きな要因である。また、『現代思想』に寄稿した論文が朝日新聞の論壇時評「今月の三点」に取り上げられるなど、予想以上の反響があったことも理由のひとつである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、基礎研究及び研究発表を中心に進めてきたので、今年度の前半ではそれらを論文としてアウトプットすることで、これまでの研究をより社会に向けて公表していきたい。その上で、今年度は「トランスジェンダーにとって他者から見られる」とはどういう経験かという問題を主題として、サルトルの『存在と無』を読解し、トランスジェンダー現象学として読み直す研究を行っていく。また、この観点から「社会がトランスジェンダーをどのように眼差し、捉えているか」という社会的な分析をも行っていきたい。
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Research Products
(7 results)