2019 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化速度の上昇がもたらす進化イノベーション:水生植物における平行的形態特殊化
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18J40090
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
片山 なつ 千葉大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 分子進化 / 水生植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水生植物の中でも特異な環境に生育し、特有の形態を共通して獲得しているカワゴケソウ科とウキクサ類を対象とし、独立した2つの分類群間における進化の共通性を探ることを目的としている。第二年度は、特に分子進化速度の上昇に関する研究を進め、1. カワゴケソウ科の分子進化速度上昇の原因の探索と論文の執筆、2. ウキクサ類の突然変異率測定のための培養環境の整備を行なった。 1. カワゴケソウ科の姉妹群であるオトギリソウ科セイヨウオトギリ、カワゴケソウ科の主な分類群を網羅する7種のRNA-seq.データから得た2048オーソロググループの配列について分子進化学的解析を行ない、論文を執筆した。これまでの解析で、分子進化速度の上昇の原因として突然変異率の上昇を挙げていたが、さらに解析を進めた結果、カワゴケソウ科の出現時の河川への進出に伴った紫外線照射量増大により突然変異率が上昇したことが示唆された。また、科内の派生的な分類群であるカワゴケソウ亜科の出現時の枝について、選択圧の検出を試みた。その結果、2048遺伝子のうち143遺伝子について、正の選択圧を受けた座位が検出され、Gene Ontology Enrichment解析を行なったところ、DNA修復に関わる遺伝子が多く存在し、3つの重要なDNA修復機構に関わる遺伝子が含まれることがわかった。これらの結果をまとめて論文の執筆を行なった。 2. カワゴケソウ科と同様に分子進化速度が上昇しているウキクサ類について、実際の1世代あたりの突然変異率を検出するため、イボウキクサ(Lemna gibba)の世代を回すための培養環境を整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は出産・育児に係る採用中断のため、10月までの研究となった。水生植物カワゴケソウ科とウキクサ類の分子遺伝学的解析を行なった。カワゴケソウ科の分子進化速度に関する研究の論文執筆については、新たな解析も加え、ほぼ終了しており、データが整理され次第、投稿できる段階にある。さらに、ウキクサ類の研究に関しても、順調に培養環境を整え、世代を回すことができ、本格的なデータ取得のための実験をスタートさせる段階になった。
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Strategy for Future Research Activity |
カワゴケソウ科の分子進化の研究に関しては、論文を国際誌に投稿する。 ウキクサ類の分子進化学的解析については、第一年度に取得したRNA-seqデータの用い、進化速度の上昇を検出するための解析を行なう。さらに他の多くの水生植物においても分子進化速度が上昇している可能性について、より広い分類群を用いて、分子進化速度の上昇が水生植物全般で見られる現象かどうかを解析する。
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Research Products
(1 results)