2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J40131
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
空 由佳子 学習院大学, 文学部史学科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 地域自治 / 食糧問題 / 穀物貿易 / 世界経済 / 貿易商人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大西洋貿易で経済成長を遂げるフランスの海港都市ボルドーとナルボンヌにおいて、いかに地域経済を発展させながら食料供給が確保されたのか、という問題を、同時代の史料にもとづいて実証的に分析することを課題とした。 本年度は、大西洋規模の生産・交換・消費の流れに組み込まれる南フランスで、経済構造および交易路の再編成がいかに進んだのか、そのなかで地域の商人はどのように穀物取引を営んだのか、その実態を解明することを目標とした。 この目標を達成するために、フランス・ラングドック地方で次の内容の現地調査を行ったうえで、史料分析を進めた。(1)2018年9月にナルボンヌ市文書館とエロー県文書館で、食糧問題と穀物貿易に関する史料収集を行った。またナルボンヌの街区やロビーヌ運河を歩いて観察するフィールドワークを行った。(2)2019年3月にオード県文書館とエロー県文書館で、引き続き食糧問題と穀物貿易に関する史料収集を行った。またベジエでミディ運河を歩いて観察するフィールドワークを行った。 この課題の遂行を通して、以下のような諸点を明らかにした。(1)大航海時代に、地中海から大西洋に海上商業の中心が移っても、地中海側のラングドック地方は、大西洋の世界市場と地中海のレヴァント市場とつながれ、経済成長を遂げていった。(2)17世紀にフランスのアメリカ植民地が建設される時期に、ラングドック地方では経済構造の再編成が進み、繊維産業が発展する一方で、穀倉地帯が形成された。(3)穀倉地帯を抱えるラングドックでは、地方内外に穀物を供給するために市場ネットワークが形成され、商人は様々な貿易障壁や統制があるなかでも、流通を担った。(4)大西洋から内陸への植民地産品の流通と、オ・ラングドックからの穀物流通が増加するに伴い、17世紀末から18世紀にかけて、王権と地域の協力のもとで水上路の整備が進められた 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の研究実施計画のうち、海外調査については、ボルドーでの調査を断念したが、ラングドックの複数の都市での調査に専念することで、予想以上に成果を上げることができた。 世界経済が内陸の後背地に与えた影響について、ラングドックの地域経済と穀物供給の観点から研究を進め、当該テーマに関する研究成果の一部を論文にまとめると同時に、国内学会での発表を準備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえて、今後は、18世紀に南フランスが経済成長を遂げる一方で、食糧問題と商人の穀物供給の活動がいかに進展するのか考察することを研究の中心的課題に設定し、これに関連する史料の収集と分析に従事する。課題を進めるために、ラングドック地方に加え、ボルドーとマルセイユの古文書館でも史料調査を開始する。また、フィールドワークをより取り入れ、地形や気候などの自然条件が共同体の経済活動および穀物供給に与えた影響や、共同体間のつながりについても理解を深める。
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Research Products
(4 results)