2018 Fiscal Year Annual Research Report
評価主体の多様性に着目した環境価値に関する国際比較
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18J40180
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 佳世 京都大学, 農学研究科 生物資源経済学専攻, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 環境評価 / 人間健康 / 生物多様性 / 選択型実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,グローバルな「環境ダメージの緩和」に対する評価を決定する要因を明らかにし,評価者の多様性を考慮した便益評価の手法を開発することである.既に取得済みの19ヵ国(G20)の健康や生態系に関する大規模アンケート調査のデータをもとに,4つの異なる非市場財(人間健康(DALY, Disability-Adjusted Life-Years),資源(USD),生物多様性(EINES, Expected Increase in Number of Extinct Species),一次生産(NPP, Net Primary Production))に対する国別・世帯別の評価額と,国の経済水準,世帯の所得水準,さらに時間選好率,幸福度等の個人属性との定量的な関係性を明らかにすることを試みた. 本年度は,(1)19ヵ国全てのデータを使って,潜在クラスモデルで評価の傾向とセグメントを推計した.その結果を受けて,モデルの精緻化を目的に,(2)4つの非市場財の評価と評価者の属性の関係を,国,地域,個人の水準を考慮して予備的に検証した.具体的には,ランダムパラメータロジットモデルで個人別の評価額(WTP)を推計し,評価者の属性との関係を定量的な把握した.さらに,幸福度研究と環境評価に関わる文献を調査し,国際比較研究の枠組みを検討した. 国別に推計した結果,新興国では人間健康に対する評価が高いのに対して,先進国では生態系保全が,インフラ整備や健康対策よりも限界的に高い価値を持っていた.さらに潜在クラスモデルを用いて,世帯属性による違いを分析すると,幸福度が高い(低い)層は生態系評価も高い(低い)傾向が見られた.幸福度は,回答者の相対所得や生活・医療の環境などを反映していると考えられ,国内の「格差」によっても,生態系に対する評価の大小が異なっていると解釈できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19ヵ国を対象とした国際比較研究は,世界的に見ても前例のないものである.研究成果の一部は,国際学術誌(The International Journal of Life Cycle Assessment)に掲載されており,世界的に注目も集めている.本年度は,予定していた分析を行うことができ,良好な結果も得られた.この新たな結果についても国際学術誌への投稿を予定している.以上のように,おおむね順調に研究は進展しており,今後もさらに成果が得られることを予想している.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,研究結果を発表資料と論文にまとめ,国内外のワークショップで専門家や研究者と意見交換をするとともに,分析の精緻化と,論文の質向上,国際学術誌への投稿に努める.また,便益移転への応用方法,手法の再検討も並行して行う.
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Research Products
(3 results)
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[Book] LIME32018
Author(s)
伊坪 徳宏、稲葉 敦
Total Pages
300
Publisher
丸善出版
ISBN
978-4621303221