2018 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ二次流れ指標を用いた新たな抗血栓性評価用CFD解析手法の確立
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18J40257
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
太田 晶子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 全血血小板凝集 / 抗血栓性評価 / マイクロ二次流れ |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究では,血液ポンプ開発における抗血栓性評価にむけて,材料表面粗さ・主流のせん断速度など独立したパラメータのみでなく,材料表面マイクロ幾何学形状近傍に発生するマイクロ二次流れのパラメータを加えた複合的要因による血球付着現象への影響を明らかにする.さらに,血栓形成度と血液性状・表面材料物性・せん断流れ・材料表面近傍のマイクロ二次流れの関係を定式化,血液ポンプ開発のための新たな流体工学的抗血栓評価法(抗血栓性評価用CFD解析)を確立することを目的とする. マイクロ幾何学構造を有する試料片への血液成分付着現象の定量化のために,血液性状,表面材料物性,せん断流れをコントロールする必要がある.せん断流れおよび表面材料物性に関しては,エンジニア的コントロールが容易であるが,血液性状に関しては各血液の個体差があるためコントロールが難しい.今年度は,血栓形成の要となる全血血小板凝集能をコントロールする方法について集中的に検討を行った.当研究では全血血小板凝集能を用いてコントロールする手法をとった. 10,000s-1以上の高せん断領域においては,クエン酸による抗凝固状態にも関わらず,30,000s-1,5分以上のせん断負荷条件下において血小板凝集能が顕著に向上することが判明した.以上によりIn Vitroの抗血栓試験において,生理的状態に近づけるための薬剤コントロールの他,血液成分付着実験前全血にせん断負荷を与えることで全血血小板凝集能をコントロールできることがわかった.500s-1以下の低せん断領域においてはせん断負荷による全血血小板凝集能コントロールよりも凝固剤等の薬剤を用いた方が有用である. また,この結果と並行して,本題となるIn vitroによる血液成分付着現象・血栓形成の定量化のための試料片設置チャンバを設計製作した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の計画は平成30年度に(1)マイクロPIV法によるマイクロ二次流れの可視化,(2)in vitro評価:リアルタイム血液成分(血球等)付着調査,令和元年度に(3)ex vivo評価:動物実験による血栓形成評価,令和2年度に(4)抗血栓性評価用CFD解析手法の確立とアプリケーションソフト開発を計画している. 本年度の(2)in vitro評価:リアルタイム血液成分(血球等)付着調査において,複合的パラメータを組み合わせた血液成分付着評価のためには,血液性状,表面材料物性,せん断流れ等の各性状をコントロールできる必要がある.しかしながら,血液性状に関しては各血液の個体差があるためコントロールや取扱が難しい.血小板の活性化特性,およびフォン・ヴィレブランド因子の破損特性などとせん断応力の関係性を明らかにした従来研究は見られるが,全血血小板凝集能とせん断の関係性を明らかにした従来研究はほとんどなく,全血血小板凝固能を用いて血液性状を表すことは新規性の高いテーマである.それゆえ,実験精度や従来研究との関連性を明確に示すことが要求されており,繰り返しの実験と条件探索が必要となるため,全体の計画より「やや遅れている」と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に計画していた(2)in vitro評価:リアルタイム血液成分(血球等)付着調査,および本年度に計画している(3)ex vivo評価:動物実験による血栓形成評価については,評価用チャンバが完成しているので連続して実験可能である.したがって昨年度遂行できなかった実験については今年遂行予定である.
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