2022 Fiscal Year Research-status Report
Paul's philosophy of language and mind overcoming the negative intellectual legacy through making english version of 'Philosophy of Faithfulness'
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18K00001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 惠 北海道大学, 文学研究院, 名誉教授 (30227326)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 信 / 主知主義 / 意志の弱さ / 生理学 / 信に基づく正義 / 国家の法人格 / 断言命令 / カント |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果公開促進費により2018年2月刊行した『信の哲学』(北大出版会)の展開を企てた。本書第二章アリストテレス倫理学における意志の弱さの理解がソクラテス的主知主義に同意できる文脈を解明した。意志の弱さは行為の選択をめぐり最善の判断をもちながら、快楽への誘惑に負けて、欲望に基づく行為を選択することに存する。常に目先の快を求める放埓者と異なり、自らの行為選択を後悔する。何が最善の行為かをめぐる無知に由来するという主知主義は、知識が他のいかなる心魂の状態に影響されることのない堅固で高貴なものであるという前提がある。アリストテレスは意志の弱さに陥っている状態におけるその知識の在り方は酔っ払いがエンペドクレスの詩を吟唱することに比し、「自然生理学」がその魂の状態の知識を持つなら、欲望の推論に巻き込まれることなく最善の行為が選択されると考えソクラテスに同意している。意志の弱さの存在を認めつつも、いかなる科学的知識が働いているときには誤った判断に陥らないかを解明した。それは『モラリア』29号「特集:千葉惠『信の哲学』における「アリストテレスの倫理的実在論―ロゴスに即して生きること」(モラリア29号2022.)として公刊された。続いて、「ローマ書」13章に見られる国家権力は神の認可のもとにあるという見解をめぐり、南原繁『国家と宗教』を手掛かりに、国家が法人格をもち個々人との契約関係における正義をパウロにおける信に基づく正義との関係において考察した。「平和を造る二種類の正義をめぐって―南原繁『国家と宗教』を手掛かりに」(方舟63号2023.1)。拙著に関心をもった人々とThe Faithfulness Projectを立ち上げ、HPを立ち上げつつある。そのProposalは回覧されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『信の哲学』第二章の中心であるアリストテレス様相存在論についての英語論文Aristotle's Modal OntologyはD.CharlesのOxford大学退官記念の論文集の位置論文として2020年に寄稿した。昨年春に二人のReadersの審査を受けThis was an extremely interesting paper.等の評価を受けたがまだOxford University Pressから刊行にいたっていない。コロナ禍故に進捗がはかばしくなかった。丸三年が経過してしまったが寄稿者の役目としてははたしているので編集者に期待したい。本年中のOxford University Pressからの公刊を期待している。The Faithfulness ProjectはHP立ち上げをめざしているが、録画の収録にいたっていない。シカゴの研究仲間が6月に来日するので展開されるであろう。それまでに台本を書くことになっている。「21世紀の宗教改革の提題77か条」の日本語版は完成したが、英語版Introductionを執筆中であるが77 articleは題名に留まっている。内容については確定したので、今後仕事の速度を上げることができるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
The Faithfulness ProjectのProposal:The Scope of influences by correcting a crucial passage in Apostle Paul’s Letter to Romansを回覧中であり、フィードバックによりよりよいものに仕上げる。このプロジェクトのHPを公開する。Proposalとともにパウロ神学の中心的箇所が誤訳されてきたことを中心にした数本のインタヴューから構成される。この録画は6月に日本で収録予定である。さらに宗教改革の提題77か条の英語版を作成し、HPに掲載する。
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Causes of Carryover |
D.Charles教授献呈論文集の刊行が遅延しているため。本書刊行後の書評会に参加予定(英国)。The Faithfulness ProjectのHP作成。
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