2018 Fiscal Year Research-status Report
存在論的な相互依存関係に関する基礎理論の整備と形而上学的諸問題への応用
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18K00014
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
鈴木 生郎 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 講師 (40771473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 依存 / 根拠づけ / 本質 / 種 / 形而上学 / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、相互的依存(相互的根拠づけ)関係について理論的整備を行うとともに、それを形而上学的問題に対して応用することである。こうした目的の元で、平成30年度は以下の二つの研究を行った。 第一に、相互的依存(根拠付け)関係の理論整備の準備として次の研究を行った。まず、近年の新たな研究(とりわけ、E. BarnesとN. Thompson)を背景に、相互的依存関係が広範な形而上学領域において重要な役割を果たしていることを確認するとともに、相互依存関係と説明関係の結びつきに関する洞察を深めた。また、本質依存に関するJ. Loweの研究を精査し、特にLoweが本質依存について非対称性を主張する議論に着目し、批判的に検討した。 第二に、依存関係に関する研究成果を、二つの形而上学的問題に応用することを試みた。まず、本研究で行う予定の物質的対象の「根拠づけ」問題については、対象が属する種(kind)、その対象の同一性、およびそれがもつ典型的性質に相互依存関係を認める立場を具体的に展開する論文を現在執筆中であり、次年度には論文として投稿予定である。次に、こうした研究を進める過程で、本研究の成果が死の害悪に関する哲学的問題に応用可能であるという着想を得た。具体的には、死を迎える当人にとって死が害悪であるのは、当人の死後の時点であるという「死後説」の主張が抱える哲学的課題について、人が属する種による根拠づけ関係を考察することで解決できると考えるに至った。そして、この研究の成果をまとめ、国内のワークショップおよび国際会議(International Association for the Philosophy of Death and Dying)で発表し、現在はその成果を論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた相互的依存関係に関する基礎的研究についてはそれをまとまった成果として発表することができなかったが、他方で、その成果を背景とした応用研究において一定の成果を上げることができている。 より具体的には、本年度は相互依存関係についての基礎研究として、 (1) 本質依存関係に着目して相互依存関係の理論的整備を行うことを目指し、また応用的な研究として、(2) 物質的対象の「根拠づけ問題」に対する自身の解答を明確化することを目的としていた。これに対し、(1) の研究については一定の洞察を得たもののそれを論文の形にまとめるまでには至らなかったが、(2)については、論文の形で公表する準備が進められている。また、本研究のさらなる応用として、(3)根拠づけ関係に基いて、死の害悪についての哲学的問題を解決するという新たな課題の着想を得ただけでなく、その着想を国内外の学会発表に結びつけることができている。 以上に述べたことから、全体として本研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的に本研究計画に従って遂行する予定だが、細部に関しては若干の方針転換を行う。 まず、相互依存(根拠づけ)関係については、本質依存関係に注目しつつもより広い観点から検討を行い、また次年度に予定していた循環に関する研究と合わせて研究を進める予定である。具体的には、相互的依存関係が幅広い形而上学領域において重要な役割を果たしているという洞察に基づき、それを適切に扱うための関係がどのようなものとなるのかを探るとともに、依存関係と説明関係の結びつきに着目しながら循環性の問題を検討する。そして、以上の成果を論文としてまとめる準備を行う。 次に、応用的研究については、まず現在準備を進めている論文を完成させ、国内外の雑誌に投稿することを目指す。特に、死の害悪に関する論文はすでに英文校正の段階にあり、次年度前半に完成させ国際雑誌に投稿する。また、物質的対象の根拠づけ問題に関する論文については、相互的依存関係に関する自身の研究を背景に完成させ、次年度後半までには国内雑誌に投することを目指す。
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Research Products
(3 results)