2019 Fiscal Year Research-status Report
存在論的な相互依存関係に関する基礎理論の整備と形而上学的諸問題への応用
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18K00014
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 生郎 日本大学, 文理学部, 准教授 (40771473)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 存在論的依存 / 根拠付け / 本質 / 同一性 / 種 / 形而上学 / 実体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、相互的な存在論的依存(相互根拠づけ)関係に関する理論的整備を行い、それを形而上学的問題、特に、いわゆる物質的対象の「根拠付け問題」や「実体の定義」の問題に応用することである。こうした目的のもとで、2019年度では、以下の研究を遂行した。
(1) まず、物質的対象の基本的性質(種、当該の種に属する対象がもつ典型的性質、同一性)に関する循環性に関する研究を進めた。その結果、当該の循環性の背後にある基本的な形而上学的描像について一定の見解をもつに至った。具体的には、物質的対象について、それが「何であるか」という側面と、それが「どのような基礎的物質から構成されているか」を区別できるが、当該の循環は、ある物質的対象が「何であるか」という側面が互いに(一つの要素に還元できない形で)結びついているということを意味するものであるという理解を得た。
(2) 加えて、この理解が、本研究の課題である「根拠づけ問題」と「実体の定義」に貢献するという考えに至った。根拠づけ問題については、一般に、物質的対象の特徴(種、典型的性質、同一性)のうち、どれか一つを原初的なものとし、他の特徴を還元的に説明するという戦略が取られることが多い。しかし、こうした説明は、先に確認した洞察からすれば、物質的対象が「何であるか」かを理解し難くするという困難を抱える。そして、その対象が「何であるか」に関する相互依存性を積極的に認めることは、こうした問題に解決に結びつくことが期待できる。加えて、以上で示した物質的対象の理解は、「何であるか」が他のもののあり方に依存しない「実体」のあり方を適切に捉えることにも結びつくものである。以上のような理解を、根拠づけ問題と実体の定義に関して別個に論文としてまとめることが、本年度の中心的課題であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度には、以下の3つの作業を中心に研究を進めた。まず、(a) 上述の洞察を踏まえ、物質的対象の「根拠づけ問題」についての論文を中心的に執筆してきた。特に、物質的対象の種や典型的性質や同一性を、一方に還元することによって説明するあり方が、「恣意性の問題」と呼びうる問題を解決できないことを示し、相互依存性を認めることがその問題解決に結びつくことを明確にすることを試みた。さらに、(b)実体の定義に関する基礎的な作業を継続し、特にD. ウィギンズの議論を背景に、自身の立場を彫琢することを試みた。(c) 加えて、 前年度に準備していた「死の害悪」に関する死後説の根拠づけの問題に関する英語論文を仕上げ、投稿することを目指してきた。しかし、本年度より大学を異動することとなり、研究環境を整備するために一定の時間を要したため、十分に学会に参加することができず、結果として成果をを発表ないし投稿するまでには至らなかった点は反省すべき点である。 以上に述べたことから、全体として本研究は「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上述の(a)および(c)の作業を完成させ、論文として発表、投稿することを第一の目標とする。とはいえ、新型コロナウイルスの流行により、国際学会に実際に出席しその成果を発表することは難しい状況にある。そのため、遠隔におけるオンライン発表や、論文投稿という形を中心に研究を進めていく予定である。より具体的には、(a)については国内外のオンライン会議における発表を、(c)について国際学会誌への投稿を試みる。また、同時に、実体の定義に関する論文の執筆を開始し、その成果を国内学会において発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
本年度に鳥取大学から日本大学に大学を異動したため、大学の研究環境を整えることに時間がかかり、多くの学会参加を見合わせることになった。その結果、学会参加のための旅費を消化することが難しくなり、資料収集にも十分な時間をとることができなかった。また、結果として研究に若干の遅れが生じてしまったため論文の完成が遅れ、英文校正費の使用にも影響が生じた。 結果として生じた差額については、現在の新型コロナウィルス感染症の流行を踏まえ、オンラインにおける発表環境の充実(具体的には、PC、カメラ、マイク等)に使用することをまず予定している。同時に、前年度滞っていた資料の収集に使用する他、完成した論文の英文校正にも用いる。同時に、オンラインでの研究会のためにその一部を使用することも予定している。
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Research Products
(1 results)