2020 Fiscal Year Research-status Report
現代諸学にまつわる問題解決のためにクザーヌスの「無学者の思想」を活用する試み
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18K00021
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Research Institution | Toho Gakuen School of Music |
Principal Investigator |
八巻 和彦 桐朋学園大学, 音楽学部, 特任教授 (10108003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 専門家 / 免許・資格 / 素人 / 日本学術会議 / 大学 / 無学者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本来であれば本研究課題の最終年度であったが、コロナ禍で研究活動が制限されたために、最終年度にふさわしい研究活動を展開することができなかった。 2020年11月8日にオンラインで開催された中世哲学会大会において、研究代表者は本研究課題による研究活動の成果の一端を「クザーヌスの〈イディオータ〉思想の現代的意義―〈専門家-素人〉相関の視点から―」と題して研究発表した。この発表では、おりから社会問題となっていた政府による日本学術会議の会員任命拒否の問題も、本研究課題の視点から考察した。そのためもあり、多くの質問が提出され活発な議論が展開された。発表者にとっても大いに有意義な機会となった。この研究発表は、その後、中世哲学会の編集委員会における査読を経て、同学会の学会誌『中世思想研究』第62号(2021年9月刊行予定)に掲載されることが決定している。 本研究課題の視点から考察することによって、日本の学術研究には、西洋の学問研究の伝統に内在している〈免許・資格を認定された専門家〉と〈真摯に真理を待ち望む素人〉という緊張関係が存在していないゆえに、革新性が欠落しやすく、そこに「真理探求」における脆弱性が存在していることが明らかになった。 研究代表者は、本研究課題と密接に関連する著作である『無学者篇』の中の一冊である『無学者篇・精神について』の読書会を2018年度から「主宰者」として行ってきているが、コロナ禍で中断されていたものを、本年度末にオンラインで開催することにして、復活させた。 冒頭に記したような状況下が原因して研究経費が残ることになったので、日本学術振興会に研究計画の延長を申請した。それが認可されたゆえに、残る研究費を使って2021年度も研究計画を続行する。そして最終年度にふさわしい研究を実施して、しっかりとした研究成果を得る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.コロナ禍で旅行が不可能であるゆえに、(1)西洋ならびに日本における大学制度の歴史について対面で教示を受けるための出張ができていない、および(2)海外の研究者と一堂に会して研究成果を発表し討論することができていない。 2.研究代表者がリモートでの討論の場を設置することに慣れていないので、リモートでの研究活動を十分に実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.国内での旅行が可能になり次第、出張して西洋ならびに日本における大学制度の歴史について対面で教示を受ける。 2.リモートでの討論の場を設置することを積極的に行って、意見交換の場を増やす。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、とくに海外出張ならびに国内出張が不可能となったために、出張経費が使用できなかった。
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