2018 Fiscal Year Research-status Report
哲学の勧め及び哲学の歴史と歴史の哲学に関するアリストテレスの第一哲学構想の研究
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18K00022
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
坂下 浩司 南山大学, 人文学部, 教授 (20332710)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 形而上学 / 哲学の歴史 / 歴史哲学 / 哲学の勧め / 存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度冬期において、本研究の着想に至るきっかけとなったPrimavesiの『形而上学』第1巻のギリシア語本文とその校訂方針について、平成32年度に主として取り組む予定の文献学的・写本系統学的問題の論争が(Fazzo, S., Aristotle’s Metaphysics Current Research to Reconcile Two Branches of the Tradition, 2016; Golitsis, P., Editing Aristotle’s Metaphysics: A Response to Silvia Fazzo’s Critical Appraisal of Oliver Primavesi’s Edition of Metaphysics Alpha, 2016)が起きたため、平成30年度にこれに関する研究状況の概観を行った。そして、彼の初期著作『哲学の勧め』の一部分であった『形而上学』第1巻第1および第2章が彼の第一哲学(=形而上学)構想へ組み込まれた意味を主としてFrede, M., Aristotle’s Account of the Origins of Philosophy, 2004/2008を手引きとしながら解明し歴史哲学的に研究した。また、平成30年に入手したPolitis, V. and J. Su, The Concept of Ousia in Metaphysics Alpha, Beta, and Gamma, 2017により、従来から認識されていた『形而上学』第1巻と第3巻と関係のみならず、それら二つの巻と第4巻のアリストテレス自身の存在論との密接な連関が明らかとなったので、少なくとも第4巻までを研究の視野に入れるべきであるとした。以上の3つの研究の成果に基づき『形而上学』の下訳を第3巻まで行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)の「おおむね順調に進展している」を選択した理由は以下の通りである。【研究面に関して】【1】予想外の時期に文献学的・写本系統学的問題の論争が起こったが、その論争についてはフォローが終わっている。【2】また、『交付申請書』の「研究目的」と「研究実施計画」で予定していた作業、すなわち、初期著作『哲学の勧め』(の一部分)であった『形而上学』第1(=Α)巻第1および第2章が彼の第一哲学(=形而上学)構想へ組み込まれた意味を歴史哲学的に反省することは、Fredeの研究を手引きとすることで、遂行することにもめどがついた。【3】そして、Politis and Suの「『形而上学』第1(=Α)巻における歴史的に存在した哲学者たちと彼の同時代の哲学者たちの対話が第4(=Γ)巻における彼の存在論に──とりわけ彼の「ウーシアー」論の内実に──通常考えられている以上に関係している」とする研究には対処が必要なことが判明したのだが、その対処に取りかかることができている。『形而上学』の下訳も、第1(=Α)、第2(=α)、第3(=Β)巻は終わっている。【物品の購入に関して】【1】平成30年度に新しいパソコン類を購入する予定であったが、私が主として使用しているパソコンでの成果の記録や検索の処理スピードは、研究の現段階では、処理する情報量や文字数の関係で本質的な障害にはなっていない。しかし、情報量が増えていく平成31年度以降にパソコンや関連する機器を購入する必要はある。【2】また、本年度購入する予定だった「アリストテレス『形而上学』の文書類型・方法論関係図書」は、出版が予定されていながらいまだ発売されていないいくつかのものを除けば、ほぼすべて購入することができ、実際に利用して研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度に、『形而上学』の文献学的・写本系統学的論争に関して「アリストテレス『形而上学』の文献学的・写本系統学的諸問題に関するPrimavesi (2012) の研究を受けて近年なされたFazzoとGolitsis論争 (2016) について──Bernardinello (1970) とHarlfinger (1979) の研究方針の対立の継続として見るとどうなるか──」という論文のドラフトを作成し、各種研究会などで発表し検討をしていただき、平成31年度または平成32年度に雑誌に載せる予定である。初期著作『哲学の勧め』であった第1および第2章が彼の第一哲学(=形而上学)構想へ組み込まれた意味を解明し歴史哲学的に反省した結果は、「アリストテレスとその「先駆者」たち──『形而上学』第1(=Α)巻のいわゆる「哲学の歴史」の記述の部分をどのように理解すべきか、あるいは彼の歴史センスの無さの問題をめぐって──」という論文のドラフトを作成し、各種研究会で発表し検討を受け、平成31年度または平成32年度に雑誌に載せる予定である。Politisらの問題提起を受けた「『形而上学』Γ(第4)巻第1章の「奇妙」な論証── physeos tinos ... kath' hauten(1003a27-28)という言葉の背後にあるもの──」は現在8割ドラフトができている。ドラフト完成後、各種研究会で発表し検討を受け、平成31年度または平成32年度に研究発表をし、かつ、時間が間に合えば、あるいは雑誌にも載せる予定である。『形而上学』の下訳については、平成31年度中に第4(=Γ)巻とそれに密接に関係している第6(=Ε)巻は終え、付属する第5(=Δ)巻も平成32年度に終えたい。そして、『形而上学』第1巻から第6巻の翻訳・註解・解説・索引を、平成32年度に発行確定にする予定である。
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Causes of Carryover |
予想よりも買う予定だった物品が安く購入できたため残額が生じた。研究を発展させるために図書を新たに購入する予定である。
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