2019 Fiscal Year Research-status Report
哲学の勧め及び哲学の歴史と歴史の哲学に関するアリストテレスの第一哲学構想の研究
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18K00022
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
坂下 浩司 南山大学, 人文学部, 教授 (20332710)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 形而上学 / 哲学の歴史 / 歴史哲学 / 哲学の勧め / 存在論 / アリストテレス / レートリケーとしての歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究初年度」である平成30年度に、Primavesiによる『形而上学』第1(=Α)巻の新しいギリシア語本文に関する文献学的・写本系統学的問題の論争について調査を行ったのであったが、「研究中年度」である令和元年度は、この調査を踏まえて、平成30年度に得られた認識──すなわち第1(=Α)巻を研究する場合にはPolitisとSuの新しい研究プログラムにしたがい少なくとも第4(=Γ)巻までを研究の視野に入れるべきである認識──に基づき、文献学的にも非常に困難な問題を内包している第4(=Γ)巻第2章の問題に取り組み、註解論文「アリストテレス『形而上学』Γ(第4)巻第2章における《オーン・アントローポス》,《ヘイス・アントローポス》,《アントローポス》を用いた議論について:1003b26-32註解」を完成し発表した。この箇所の問題は、最新のPrimavesi的な観点から見直されることが十分にはなされていなかったので、それがなされたことにはアリストテレス研究上の大きな意義がある。さらに、初期著作『哲学の勧め』(の一部分)であったと推測されている『形而上学』第1(=Α)巻第1および第2章が、第3章から第10章までの《哲学史》として知られている自然学的四原因論史へ接続され、このような仕方で『形而上学』第1(=Α)巻の議論全体が彼の第一哲学(=形而上学)構想へ組み込まれている意味を、主として古代哲学研究者のFredeを手引きとしながら解明し研究したのが平成30年度であったが、令和元年度は、歴史学者にして歴史哲学者のGinzburgのアリストテレス論にも学びながら、上記の「接続」を《レートリケー(弁論)としての歴史》という歴史哲学の観点から研究した。以上の研究の成果に基づき、『形而上学』第4(=Γ)巻全部と第5(=Δ)巻前半(第16章まで)の下訳を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)の「おおむね順調に進展している」を選択した理由は以下の通りである。【研究面に関して】【1】「研究初年度」である平成30年度における『形而上学』第1(=Α)巻の文献学的基礎研究に基づいて、「研究中年度」である令和元年度に、その応用問題として、第4(=Γ)巻(第2章)の困難な文献学的問題に取り組み、註解論文を完成・発表できている。【2】また、『交付申請書』の「研究目的」と「研究実施計画」で予定していた作業、すなわち、初期著作『哲学の勧め』(の一部分)であった『形而上学』第1(=Α)巻第1および第2章が彼の第一哲学(=形而上学)構想へ組み込まれた意味を歴史哲学的に解明することは、令和元年度、Ginzburgのアリストテレス論にも学びながら、《レートリケー(弁論)としての歴史》という歴史哲学の観点から研究できている。【3】そして、『形而上学』の下訳も、「研究初年度」である平成30年度に、第1(=Α)、第2(=α)、第3(=Β)巻に続いて、「研究中年度」である令和元年度には、一貫した解釈が非常に困難な第4(=Γ)巻全部と、簡単なようでありながら風変わりで扱いがかえって難しい第5(=Δ)巻の前半(第16章まで)を終えられている。【物品の購入に関して】【1】平成30年度に新型がなかなか発売されなかったApple社のパソコンの新製品がようやく発売され購入することができている。【2】また、本年度購入する予定だった、ソクラテス以前哲学者研究関係図書、ソフィストと《哲学史》記述研究関係図書、ソクラテス・プラトン研究関係図書、アリストテレスと《哲学史》研究関係図書、「ドクソグラフィー」研究関係図書、現代の歴史哲学関係図書などは、出版が予定されていながらまだ発売されていないものを除けば、ほぼすべて購入することができ、利用している。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】令和2年度に、Politis and Suの問題提起を受けて『形而上学』第1(=Α)巻と第4(=Γ)巻の本質的な関係を考察した研究成果の論文「『形而上学』Γ巻第1章の《存在論》再論──Α巻における「第一の諸原理の探求」にとってΓ巻の「存在としての存在」そして「或る自然」とはいったい何だったのか──」を、査読付き学会誌に発表し研究を推進する。【2】初期著作『哲学の勧め』であった第1〜2章が彼の第一哲学構想へ組み込まれた意味を解明し歴史哲学的に反省した結果は、前記査読付き論文(予定)の成果を活かし、「アリストテレスと《哲学史》の誕生──『形而上学』Α巻における「哲学の勧め」部(第1〜2章)と「自然学的四原因論史」部(第3〜10章)との内的関係についての歴史哲学的反省──」(仮題)として発表し、このようにして今後の研究の推進をする。【3】単独訳の新訳『形而上学』の下訳については、令和2年度中に、『形而上学』第5(=Δ)巻後半(14章分)、そして第6(=Ε)巻を終え、前2年に下訳した分を含めて原稿を推敲し、出版のための「翻訳・註解・解説」の原稿に仕上げる。【4】そのため、アリストテレス『形而上学』関係図書、ペリパトス派関係図書などを入手し研究を進める。消耗品のコピーカード代を用いて資料を収集する。パソコン上で平行して開くファイルが多くなってきたため、大きめのモニタと補助的に使用できるタブレットを購入して研究を促進する。
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Causes of Carryover |
2019年度2月の事務〆切最終日(新型コロナウイルスのためカスタムPCの納入が遅れていた)に検収を終えたPC Apple mac miniカスタム1台とトラックパッドとキーボード各1台の合計252120円の実際の支払い日が事務手続き上2020/04/09になってしまったため、計算上287875円が残ったことになっているが、本来の残金は35755円であり、この35755円は予約したがまだ届かない洋書類のために生じている。これは引き続きもともとの予定の洋書類にあて、新年度はモニタ・タブレット・資料の書籍・文房具・コピー代などに使う計画である。
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Research Products
(1 results)