2020 Fiscal Year Research-status Report
西洋哲学の初期受容とその展開―井上円了と清沢満之の東大時代未公開ノートの公開―
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18K00024
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
村山 保史 大谷大学, 文学部, 教授 (70310646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 節夫 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (50584249)
柴田 隆行 東洋大学, 社会学部, 教授 (20235576) [Withdrawn]
シュルツァ ライナ 東洋大学, 情報連携学部, 准教授 (90622936)
岩井 昌悟 東洋大学, 文学部, 教授 (40398839)
西尾 浩二 大谷大学, 文学部, 講師 (20510225)
Conway Michael 大谷大学, 文学部, 准教授 (70549526)
味村 考祐 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (90823245)
狭間 芳樹 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (80588046)
東 真行 大谷大学, 文学部, 助教 (00802878) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェノロサ / ノックス / ブッセ / 井上円了 / 清沢満之 / 西洋哲学 / 近代仏教 / 東京大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、井上円了と清沢満之の遺稿(複数のノート)から発見された東京大学在学時の外国人哲学教師(フェノロサ、ノックス、ブッセ)による未公開講義録とそれに関連する学習録の公開作業を通じて日本における西洋哲学の初期受容の一形態を解明し、あわせて、その後の井上と清沢の思想発展過程の一端を解明することを目的としている。そしてこの目的を果たすために以下の3つの課題を設定している。研究課題1a:東洋大学が所蔵する井上の哲学関係ノートを公開すること。研究課題1b:大谷大学真宗総合研究所が所蔵する清沢の哲学関係ノートを公開すること。研究課題2:東京大学の最初期の哲学教育が私立大学の教育にどのように継承されたのかを哲学館(東洋大学の前身)と真宗大学(大谷大学の前身)における教育内容の確認を通じて解明すること。2020年度は1bを重点課題とし、1aと2についても並行して研究を続けた。 具体的には、重点課題とした1bについて、清沢のノートに含まれていたフェノロサの「哲学(史)」講義のヘーゲル以降部分の仮翻刻・翻訳を作成するとともに、ブッセの「哲学(古代哲学史)」講義の後半部分の翻刻・翻訳と、ノックスの「倫理学」講義の前半部分の翻刻を作成して研究誌に公開した。ブッセとノックスの講義録が公開されるのはこれがはじめてのことである。1aについては、井上と同級生であった金井延の筆記による未公開のフェノロサ講義録(複写のみ入手しているもの。原本はイェール大学バイネッキ稀覯本図書館蔵)の仮翻刻作業を終え、2については三浦節夫(執筆責任者)『チャレンジャー・井上円了―「自分の人生は自分で拓け」―』(『井上円了の教育理念』東洋大学、1987年を全面的に改訂したもの)の原稿(約10万字)を作成した。この書は2021年度に東洋大学から出版され、東洋大学における理念教育の教科書として使用される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年の研究開始時には2020年度は研究課題の1aと1bと2を重点課題とする予定であったが、1aと2の作業が進展したことから、2020年度は1bのみを重点課題とし、1aと2については研究開始時には想定していなかった発展的作業を行った。これまでの研究の進捗は、より詳細には以下のとおりである。 重点課題とした1bについては、2019年度にフェノロサの「哲学(史)」講義のヘーゲル以前部分の仮翻刻・翻訳を作成し、ブッセの「哲学(古代哲学史)」講義の前半部分の翻刻・翻訳を公開したことに続き、2020年度はフェノロサの「哲学(史)」講義のヘーゲル以降部分の仮翻刻・翻訳を作成し、ブッセの「哲学(古代哲学史)」講義の後半部分の翻刻・翻訳と、ノックスの「倫理学」講義の前半部分の翻刻を作成して研究誌に公開した。2020年度中にフェノロサ講義のヘーゲル以前・以降部分とノックス講義の後半部分を公開することは可能であったが、作業の精度をより高めるために、この作業は2021年度に実施することにした。1aについては、2019年度に9冊のノートすべてを翻刻(翻訳)して作業を終了している。2020年度は1aの発展的作業として、金井筆記のフェノロサ講義録の仮翻刻を作成したが、現地(バイネッキ稀覯本図書館)での調査(複写と原本の照合作業)は、新型コロナ感染拡大によって実施できなかった。2については、2018年度の関係論文の公開、2019年度の関係講演の実施により作業を終了していたが、発展的作業として2020年度に、東洋大学と井上の関係を問う理念教育用の原稿を作成した。 また2020年度に研究に関する意見交換を目的として予定していた共同研究会と公開講演会は新型コロナ感染拡大によって会合形式をとることはできなかったが、それに代わる情報交換をインターネット上で実施したことから目的は果たした。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に引き続き研究課題1bを重点課題とし、フェノロサの「哲学(史)」講義のヘーゲル以前・以降部分の翻刻・翻訳を完成して2021年3月に『フェノロサ「哲学史」講義(続続)』(仮称)として出版するとともに、ノックスの「倫理学」講義の後半部分の翻刻を研究誌に公開する。これと並行して、1aの発展的作業として、金井筆記のフェノロサ講義録の現地(バイネッキ稀覯本図書館)での調査を実施する。また研究に関する意見交換を目的とする会合も、社会状況に配慮しながら可能な限り実施する。
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Causes of Carryover |
『フェノロサ「哲学史」講義(続続)』(仮称)を出版公開することを研究の最終年度の目標にしている。本研究の重要性が学界に周知されつつあることから、同書の印刷・配布部数が研究開始時の想定より増える場合など、発展的に費用が増加した場合の対策として、2020年度は助成金の使用を意図的に抑制した。また金井筆記のフェノロサ講義録の現地調査の渡航費を残すために、やはり一部の研究者の助成金の使用を意図的に抑制した。
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Research Products
(8 results)