2019 Fiscal Year Research-status Report
A Basic Study on the Constitution of the Soma Sacrifice in the Vedic Literature
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18K00057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大島 智靖 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 研究員 (60626878)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヴェーダ / 祭式 / ソーマ祭 / アグニシュトーマ / シュラウタ・スートラ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引き続きソーマ祭基本形の構造研究を進めた。学派毎の祭式次第を照合し、歴史的展開を解明するための基盤作業として、特に未だ学界では十分に扱われていない新資料ヴァードゥーラ学派のシュラウタ・スートラが伝える「潔斎」諸儀礼を取り扱い、先行あるいは後続する諸学派との比較研究を行った。 最も保守派と想定されるバウダーヤナ派との類似性は既に知られていたが、いわゆる「新タイッティリーヤ派」との先後関係は、ソーマ祭基本形に関しては依然として明らかになっていない部分がある。ソーマ祭導入儀礼となる「潔斎」は、解釈論の集成であるブラーフマナ文献の段階で既に学派に応じた特色を示していた。しかし儀礼次第(構造)においては、保守的な黒ヤジュルヴェーダ系統と革新的な白ヤジュルヴェーダ系統との間にある乖離が目立つものの、黒ヤジュルヴェーダ諸派における儀礼次第の展開は、無関心なトピックは省略する傾向にあるブラーフマナ文献からは判明せず、ヴェールに包まれたままである。儀礼次第のみを伝えるシュラウタ・スートラ文献の段階になるとより多くの学派の伝承があったことが知られるようになり、それらにヴァードゥーラ学派を加えることによってポスト・ブラーフマナ期におけるソーマ祭の歴史的展開と、ヴァードゥーラ学派の特色が浮き彫りになる見込みがある。 今年度は、その作業によってヴァードゥーラ学派が従来持っていると考えられてきた「保守性」に対して認識の再考が必要であることが明らかになった。保守派の祭式を継承しながら、後代の諸派が伝統的祭式を解体・再構築していく導火線的役割を果たしていた可能性が見えてきた。 また、2月に幸運にもハリドワールにおけるソーマ祭基本形の取材に成功し、現代のソーマ祭についても知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に今年度の成果の一部を国際ヴェーディック・ワークショップで発表することができたということ、また第二に、現代のソーマ祭を取材するチャンスに恵まれ、史的ヴェーダ祭式を研究する上で一助となる資料を得ることができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、今年度と同様の作業を進めるが、ヴァードゥーラ学派のシュラウタ・スートラを基軸にしてソーマ祭の構造と史的展開を解明する。またヴァードゥーラ・シュラウタ・スートラ自体が難解であるため、その解明にもウエイトを置く予定である。
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