2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00065
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
後藤 敏文 国際仏教学大学院大学, その他の研究科, 教授 (40215497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インドアーリヤ語 / インド・ヨーロッパ語比較文法 / インド・イラン語歴史文法 / ヴェーダ / アヴェスタ / サンスクリット語 / パーリ語 / 動詞文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
古インド・アーリヤ語(広義の「サンスクリット語」)の動詞組織について,具体的語形と用例を収集し,活用組織を確定し,語形成とシステムそれぞれの機能と原理を厳密に分析し,歴史的展開を跡づけて記述する。ヴェーダ語から古典サンスクリットに至る記述文法と歴史文法とを兼ね備え,文献研究の参考書としても役立つ動詞形態論の記述を完成させる。歴史的に,インド・ヨーロッパ祖語,インド・イラン祖語に遡って各形態の起源と改変とを分析して跡づけ,他方,必要に応じて,パーリ語を始めとする中期インドアーリヤ語への展開にも留意する。さらに,副詞等の不変化詞をも合わせて扱い,先行の研究計画で完成した名詞,数詞,代名詞に関する部分と合わせ,古インド・アーリヤ語形態論の出版を目指す。類書が無い現状から,インド・ヨーロッパ語比較言語学の一到達点を紹介する入門書ともなろう。 本年度は,インド・ヨーロッパ語比較言語学における最近の諸研究を吟味し,動詞組織を形成する各カテゴリーの分析確定に時間を割いた。具体的な内容としては以下の5項目の検討記述を行った: (1) 能動態と中受動の両態(Diathese)の形態,言語事実と原理,その多重多層なあり方とシステムの分析,歴史的起源と展開次第,(2) 動詞語根の語彙的内容が持つ時間軸的性質(Aktionsart: 瞬間的←→持続的など),動作様態(Verhaltensart: 行為,状態変化,状態; 作成,作為,加工; 使役,受動など),支配様態(Rektionsart: 自動詞,他動詞,絶対用法,など),(3) アスペクト(観)とそれの基づくアスペクト語幹(現在組織とアオリスト組織)の形成法,補完現象(Suppletion); 完了組織,(4) 現在語幹形成法とその分類法の確定(パーニニの10分類を合理的に再編),(5) 動詞語尾一覧とその起源と原理。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近のインド・ヨーロッパ語比較言語学における成果ないし提言を改めて検討し,諸カテゴリーを分析吟味して確実なものとして設定する理論的作業に,当初の予定よりも時間が懸かった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は次の2章を完成させる,(1) 「法」(言及法,直説法,接続法,願望法,命令法)の概念と機能,形成原理の分析,アスペクト語幹(現在語幹とアオリスト語幹),完了語幹における「法」の具体的発現事情と改変の確認,(2) 現在語幹形成法の分類と各類に属する動詞語形の収集確認,各類の基本的機能(形成法の動機)と原理。-- 8月にはドブロヴニク(クロアチア)で開催される国際ヴェーダ学ワークショップに久しぶりに参加して最新の知見を得る。 2020年度にはアオリスト組織と完了組織,二次的現在語幹(未来語幹,意欲活用語幹,反復活用語幹,使役語幹,受身語幹,名詞起源語幹類)の分析と記述を終える。 最終2021年度前半に,動詞起源の名詞等派生諸語形(不定詞,絶対詞,等々)を扱い,後半に,副詞,間投詞等を簡潔に扱ってこれまでの諸成果を再点検し,出版用原稿の完成を目指す。
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Causes of Carryover |
当初出席を考えていた国際学会のテーマに相応しいものが無く,発表の準備ができなかった。勤務校の最終年度に当たり,すべきことが多く,また研究計画自体を先に進めておきたかった。ノートパソコン,電子辞書等,設備の更新,増補が必要でありながら詰め切れず,窓口となる大学の移行措置を待った。2019年度は,クロアチアで開かれる国際ヴェーダ学ワークショップに開催者側の一員として出席を予定している。しかるべき学会で発表を再開したい。書籍の注文やコピーにも予定しているものが多く,早めに揃える。
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