2020 Fiscal Year Research-status Report
新出資料の調査と分析に基づく沖縄仏教史・真宗史に関する総合的研究
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18K00088
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
福島 栄寿 大谷大学, 文学部, 教授 (20453293)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浄土真宗布教 / 明治期 / 沖縄・琉球 / 真宗僧侶 / 真宗法難事件 / 琉球藩庁 / 真宗大谷派 / 小栗憲一 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実績としては、以下の通り。 ①学会発表:日本宗教学会(2020年9月18日~20日 駒澤大学)で、パネル発表「明治初期真宗布教と「法難事件」に関する研究」として成果報告を行う予定であったが、コロナ禍で、学会誌への発表要旨の掲載に代替された。発表要旨は『宗教研究』第94巻別冊(p.258~259)に掲載されている。研究成果が国内外の学界に広く知られ、共有されることに重要な意義がある。 ②共同研究会の開催:2020年9月9日、及び2021年2月23日に、オンラインで共同研究会を開催した。参加者はいずれも研究協力者の知名定寛氏、川邉雄大氏、長谷暢氏と、高桑優和氏(大谷大学院生)。9月の研究会では、翻刻史料の検討、及び本年度の研究の進め方の検討を、及び2月の共同研究会では、高桑氏の「明治初期の真宗大谷派と琉球処分―琉球布教で用いられた教義を中心に―」と題する研究発表、翻刻史料の検討、及び研究期間の延長の件、最終年度の次年度に向けた研究課題の検討等を実施した。研究成果の現状、及び研究の進捗状況と次年度に向けた課題を共有し得る有意義な機会となった。 ③史料検討会の実施:2020年12月18日、古書店図録掲載の『在琉球内務省出張所往復並藩庁応接記』の史料価値につき、原本史料を研究協力者の知名定寛氏同席の下、検討を実施した。本研究に資する貴重な史料と判明し、大谷大学図書館での購入が決定した。 ④研究成果の公開:本年度の研究成果の一つである真宗大谷派鹿児島別院蔵『琉球国内務省出張所往復書藩庁往復並応接記綴込布教掛』の要旨と翻刻(紙幅の都合で前半のみを公開)を大谷大学真宗総合研究所『真宗総合研究所紀要』第38号(2021年3月)に掲載した。史料翻刻は大谷大学HP上にリポジトリとして公開されている。HPリポジトリでの翻刻史料の公開は、琉球真宗・仏教史研究の進展に資すると確信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間中の進捗状況を主に二つの観点から報告する。 ①研究課題中の新出資料の調査実施:研究期間中、2018年度・2019年度は、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、沖縄県(石垣島、竹富島、座間味島)の関連施設、寺院等への現地調査、聞き取り、資料収集及び撮影を実施した。収集した新出資料は翻刻し、毎年度内に2回開催する共同研究会で史料検討会を実施、史料公開のための作業を実施することができた点では、概ね予定通りの進捗状況と考えている。しかし研究成果の精度を上げるために2020年度に実施予定していた福岡県内での聞き取り、及び沖縄県、座間味島への再調査が、課題として残されている。 ②新出資料に基づく研究成果の公開:研究代表者の福島が、真宗連合学会と日本宗教学会という学術大会での研究発表、及び研究成果を踏まえた講演を沖縄県立図書館並びに真宗大谷派難波別院で登壇し実施した。また、現地調査で収集した新出資料は、研究協力者と共に翻刻作業を行い、「【翻刻】明治十一年三月整頓 琉球上申書類綴込」『真宗総合研究所研究紀要』第37号所収(2020年3月発行)として公開できた。他にも、翻刻作業の成果として、「【翻刻】琉球国内務省出張所往復書藩庁往復並応接記綴込布教掛(前半)」『真宗総合研究所紀要』第38号所収(2021年3月発行)を発行できたが、紙幅の都合で掲載できなかった後半の公開が、次年度の課題として残されている。加えて、翻刻資料を用いた学術論文を福島栄寿が2本、知名定寛が1本を著すことができたが、明治初期東西本願寺と琉球関係、咸宜園(大分)、長崎、鹿児島、琉球の真宗ネットワークなど、研究課題として解明すべき諸点が残されている。研究全体としては、資料の発掘はおおむね順調に進展していると言えるが、研究成果の公開の点においては、最終年度に取り組むべき課題が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
この3年間の研究期間において、本研究の活動は、おおむね順調に進展していると評価しているが、当初の予定では2020年度に予定していた東京都、沖縄県地域、及び九州地域への訪問、聞き取り調査について、コロナ感染症のため実施できなかった。このため、研究期間の延長を行い、2021年度には、感染症の状況を勘案しながら、最少人数の研究協力者で調査に当る方法や、オンラインでの調査方法を模索したいと考えている。 また、2020年度の研究成果として発行した真宗大谷派鹿児島別院蔵「【翻刻】琉球国内務省出張所往復書藩庁往復並応接記綴込布教掛(前半)」(『真宗総合研究所紀要』第38号所収)は、発行誌の紙幅の都合のため、前半部分の発刊となったため、2021年度の研究成果として後半部分を発行する予定である。 加えて、年度内に通常は2回実施している共同研究会については、出来るだけ対面方式での開催を模索したいが、感染症予防のため、2020年度と同様に、オンラインでの開催も視野に入れている。共同研究会では、研究期間終了後に研究成果の公開の方法について、出版物の刊行を含めて予定しているため、そのための準備について進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は、感染症拡大予防のため、東京都、沖縄県、九州地域等への予定していた調査活動が実施できなかった分の旅費、人件費・謝金について未執行となった。これらの調査活動については、感染症の状況を勘案しつつ、次年度の実施を予定している。加えて、当該年度には、当初、日本宗教学会第79回学術大会(東京都・駒澤大学)でのパネル発表を予定していたが、感染症拡大予防の観点からすべてオンライン開催となったため、研究協力者の旅費、人件費・謝金について未執行となった。次年度も日本宗教学会学術大会での発表を予定しているので、そのための経費として旅費等を執行することを予定している。 また、当該年度内に2回の対面式による共同研究会の実施を予定していたが、感染症拡大予防の観点から、オンラインで実施した。このため、研究協力者の旅費等についても未執行となった。次年度の共同研究会の開催については、感染症の状況を勘案しつつ、出来るだけ、対面式での実施を模索したいと考えているため、共同研究会の実施に際して、旅費、人件費・謝金等の経費の執行を予定している。
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Research Products
(6 results)