2021 Fiscal Year Research-status Report
トランスナショナルなシティズンシップと人権に関する思想史的研究
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18K00105
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中村 健吾 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70254373)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自由な自己意識 / 相互承認 / 第3者 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、2021年5月末に消化器の手術を受け、約1カ月の入院期間を経て、同年7月上旬に退院した。退院後も薬剤治療を続けており、体調は思わしくなく、当初の計画通りの研究はなしえなかった。 しかしながら、G.W.F.ヘーゲルの全集に収められている『主観的精神の哲学に関する講義録』の1822年版、1825年版、1827‐28年版における普遍的自己意識の成立過程についての叙述を比較対照することにより、ヘーゲルにおいて法‐権利概念の生成の基盤となる自己意識の相互承認の基本構造の解明を一歩進めることができた。すなわち、ヘーゲルの『精神の現象学』における「自己意識」に関する章では未完に終わることになっている主(Herr)と下僕(Knecht)との承認をめぐる闘争の結末は、『精神哲学』においては数多くの自由な自己意識の存在を自我が承認するにいたるという経緯をたどるのである。 上記の点は、へーゲルが生前に公刊した『哲学的諸学の百科全書』所収の『精神哲学』においては明示されていない論点であり、ヘーゲルの法‐権利の理論の解明にとっても有意義である。というのも、「我(Ich)」と「汝(Du)」という2人のみの関係では、第3者による客観的な正義の観点を必須とする法‐権利の観念の形成には到りえないのであって、そこには数多くの自由な第3者の存在を「我(自我)」が承認することが介在しなければならないからである。 なお、本研究の副産物として、U.ブラント/M.ヴィッセン著『地球を壊す暮らし方』(ドイツ語の原題は『帝国型生活様式(Imperiale Lebensweise)』の翻訳書を、2022年6月に岩波書店から公刊した。この著作の最終章で述べられている「連帯型生活様式」という構想は、研究代表者が抱いているトランスナショナルなシティズンシップの構想と親和するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上でも記したように、研究代表者の手術、入院、退院後の薬剤治療の継続のせいで、研究は当初の予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者による治療薬の服用は、順調に推移すれば2022年7月一杯で終了する予定である。その後は、主治医によれば、研究代表者がいま体験しているような日常的な発熱や倦怠感は和らぐという。 したがって、2022年8月以降は研究の総括と公刊の準備に進みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度は研究代表者の体調が思わしくなかったせいで、研究および助成金の執行が滞った。2022年度には、研究代表者の体調の回復後に本格的な研究を活動を再開し、助成金による専門文献の購入を進める予定である。
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Research Products
(1 results)