2022 Fiscal Year Annual Research Report
Philosophical and Historical Study on Transnational Citizenship and Human Rights
Project/Area Number |
18K00105
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中村 健吾 大阪公立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70254373)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シティズンシップ / 人権 / 相互承認 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、研究代表者が前年度に患った病気に加え、新たに2つの異なる病気を発症し、対応する手術や服薬のため、十分な成果をあげることができなかった。そうであるとはいえ、2020年以降における新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大のなかで、EU(欧州連合)においては、トランスナショナルな社会的権利を実質化しようとする試みが進行しつつあることを突きとめ、EUとその加盟国によるそうした試みを包括的に提示するための編著(『コロナ危機と欧州福祉レジームの変容』仮題)を2022年度に準備することができた。同編著は、2023年9月に出版社の昭和堂より公刊される予定である。 より具体的に述べるなら、EUはコロナ危機を経て、EUが債券を発行して金融市場から資金を調達し、それをコロナ危機の影響が深刻な加盟国に無償で支給するという財政移転の仕組みをともなう『次世代EU』という画期的な制度を2000年に設けた。EUはこれに加えて、『欧州保健同盟』の建設や『欧州社会権の柱・行動計画』をとおして、トランスナショナルな社会的諸権利を保障しうる「強い社会的ヨーロッパ」の建設を志向するようになっている。 前段落で記した内容を、研究代表者は上記の編著の序章において叙述した。この序章では、権利保障のための新しい制度的枠組みの形成をEUにおいて可能にした政治的・社会的力関係の変動を分析している。それは実はとりもなおさず、既存の社会的権利の妥当範囲の拡張にかかわる相互承認の闘争過程なのである。 しかしながら、EUに関する上記の研究成果は、2021年度までに研究代表者が部分的ながら進展させてきた哲学史上の相互承認理論と接合するにはいたっていない。この接合作業は、2023年度以降の研究課題として残る。
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Research Products
(1 results)