2020 Fiscal Year Research-status Report
16-18世紀インドにおける存在一性論の継承についての実証的研究
Project/Area Number |
18K00114
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
石田 友梨 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特任助教 (60734316)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラーム思想 / RDF / SPARQL / インド / 存在一性論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、インドにおける存在一性論の継承を明らかにすることにある。イブン・アラビーによって唱えられた存在一性論がインドにどのように伝わり、なぜアフマド・スィルヒンディーによって批判されるに至ったかについて、本研究ではデジタル・ヒューマニティーズの手法を用いながら検証している。存在一性論の継承を検証するにあたり、外的条件として師弟関係や書物を通じて存在一性論に接したことが確認できるか、内的条件として著書に存在一性論についての言及があるかを基準とした。基準を定量化することができれば、思想の継承について汎用性のある検証方法を確立することができるため、思想史の研究手法の発展に大きく貢献することになる。 当初の研究計画では、今年度はインドの存在一性論者の原典分析を行う予定であった。しかし、海外渡航が制限されて写本調査などが行えないことが見込まれたため、存在一性論の継承を考察するためのデータベースを作成することにした。他の研究者にも利用できるような形で、これまでの研究成果を提供することを目指し、探索機能付き試験版データベースをインターネット上で公開した。この試験版データベースにおいては、外的条件となるデータを3つの関係に分類して収録した。1つめは直接的な師弟関係、2つめは友人などの対等な関係、3つめは書物などを通じた間接的な関係である。この分類の妥当性については、内的条件として仮定した著書における特徴語の頻度などとの相関を考察していくことで検証し、修正していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、予定していた写本調査を行うことができないことで研究計画の大幅な修正が必要となった。一方、これまで試行錯誤してきたデジタル・ヒューマニティーズの研究手法に基づく研究成果の発信に見通しが立ってきた。師弟関係を分析するために収集してきたデータを、新しく習得したRDF(Resource Description Framework)の形式にすることにより、SPARQLというコンピュータ言語で検索可能な形で公開することができた。本研究の対象は16―18世紀インドであるが、データの入力形式を整えることで、他の時代や地域を対象とする研究者たちのデータと組み合わせ、多目的・広範囲の検索が可能なデータベースの基盤となることが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
公開した試験版データベースは、専門知識がなければデータの検索を行うことができない状態である。データの修正と同時に、直感的な操作で検索が可能なGUI(Graphical User Interface)の開発も進めていきたい。来年度も写本調査の予定が立たないため、原典分析が必要となる内的条件の考察は不十分なものになると思われるものの、手持ちの資料で可能なかぎり進めていきたい。また、資料のオンライン公開の流れが加速していることから、現地を訪問せずとも入手できる資料が増えることを期待している。 今年度は本研究課題と直接関係する論文を発表することができなかったが、本研究でも使用するテキストマイニングの手法を用いた共著論文は発表している。この成果を活かし、来年度は本研究課題での論文を完成させたい。また、今年度取り組んだデータベース公開のように、デジタル・ヒューマニティーズの研究手法を活かして論文以外の形で研究成果を公開していくことを目指していきたい。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、海外での調査のために計上していた旅費が使用できなかったことから、次年度使用額が生じた。研究計画を変更し、旅費をテキストマイニングに必要な翻刻作業の謝金とする予定であったが、著作権の確認をする作業の過程で、権利者が不明の状態になっていることが判明した。このため、翻刻作業も中止せざるをえなかった。 次年度も計画通り旅費として使用することはできないと思われるので、著作権の問題が生じない資料の翻刻作業、資料の複写や取り寄せにかかる費用、データベース入力のための人件費などに使用する予定である。
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