2018 Fiscal Year Research-status Report
大正期から昭和初期におけるピアノ演奏法とその指導法の発展――園田清秀を中心に――
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18K00124
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山下 薫子 (坂田薫子) 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90283324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 園田清秀 / 園田高弘 / ピアノ指導法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,園田清秀と高弘親子の遺した史資料を中心に置き,これらの分析と考察を通して,大正期から昭和初期におけるピアノ演奏法や指導法がどのように発展したのか,その一端を明らかにすることにある。 初年度の平成30年度には,大正期から昭和初期の日本における西洋音楽,とりわけピアノ演奏に関する研究の収集に努めた。西洋音楽受容に関する研究およびピアノ演奏法やその指導法に関する文献を入手するとともに,音楽総合研究センターに保管されている私家版資料等と突き合せながら分析を試みている。 その結果,園田清秀によるピアノ指導法の開発の過程において,当時の音楽史と関わる問題があったことが分かってきた。一例を挙げれば,運指の数字(1,2,3)を,略譜(数字譜)のド,レ,ミと誤って読んでいる人が多数いたということである。その上で,清秀は,ピアノを始めると同時に指の恰好を注意しすぎると,却って素直な手の働きを損なうことがあるとして,子供の場合には音符と鍵盤との関係を教えることに専念すべきであるとしている。ここに,清秀がピアノの奏法と運指を相対化する基礎を築いたと指摘する研究者も存在する。 また清秀は,当時,日本の音楽教育が音楽の文法から入っていることを疑問視し,音に対する感覚の体得を優先すべきだとして,和音感に基づく絶対音早教育を考案したことが分かった。 このように,園田清秀の言説を,一つ一つ西洋音楽の受容史および音楽教育史の文脈に位置づけていくことで,ピアノ指導や音感指導に関する思考の枠組みがどのように構築されたのかを明らかにできると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では,研究補助の協力を得ながら,園田清秀,高弘親子の貴重資料を整理することが,研究内容の1つの柱となっていたが,着手することができなかった。 その理由は,その貴重資料を保管している音楽総合研究センターの方で,データサーバーやPC端末を一新することになったためである。本研究のデータベースも同じサーバーを使用することから,サーバーの入れ替えやデータベースソフトの更新が完了する年度末まで作業を開始することが難しい状況であった。 その他の研究内容は,おおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
年度末にデータ入力に関わる準備が整ったことから,前年度の遅れは速やかに取り戻せると考えている。 また,研究の進捗状況によっては,専門分野の異なる研究協力者を得て複眼的に考察することも視野に入れている。
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Causes of Carryover |
【7.現在までの進捗状況】でも述べたとおり,研究補助の協力を得て実施する計画であった一次資料のデータ入力が,サーバーやデータベースソフト,PC端末等の更新のために開始できなかったことによる。 この分については,研究補助への謝金として,2019年度と2020年度に振り分けて使用することとしたい。
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