2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の芸能「能」の演奏技法の伝承過程に関する歴史的研究‐能管を中心に‐
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18K00150
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Research Institution | Kyoto University of the Arts |
Principal Investigator |
森田 都紀 京都芸術大学, 芸術学部, 准教授 (10572258)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 音楽学 / 能 / 能管 / 演奏技法 / 唱歌 / 伝書 / 伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの調査を通じて、公共機関で所蔵されている一噌流関連史料を一通り検証することができたが、史料数に制約があり、伝書や手付によっては記述が断片的で体系的な考察につながらないという課題が残った。 これを解消するために、今年度は当初の予定より系統・地域を拡大し、宗家系以外の役者や、他流儀との影響関係にも目を配った分析を試みるべく、史料調査・収集を幅広く行っていく予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により多くの公共機関が閉館するなかで、予定していたような調査を進めるのは困難となった。公共機関を活用せずに手元の史料を活用した検証へと可能な限り変更する必要に迫られることとなり、他流儀(森田流傍系)ではあるが、能管の史料としては最初期のものと思われる由良家史料(萩博物館寄託)の手元の控えを活用した検証へ転換することとした。由良家史料に関しては室町時代末期頃から幕末頃までの笛伝書ならびに手付・頭付等の譜本類が現存しており、それらの分析を通じて由良家の伝承を歴史的に辿ることができる。由良家史料とすでに調査済の一噌流史料とを照合し、流儀間の演奏技法を詳細に検証することにより、伝承内容が形成されていく過程とそれらの相互関係をおさえていくことを新たな課題に据えた。由良家史料は点数が膨大で未翻刻のものがほとんどであるが、公開されている目録をもとに譜本を中心に目を通し、伝承の内容の異同を丹念に読み解いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、交通機関を利用した調査が難しい時期があったため。また、公共図書館が予約制・短時間枠での閲覧となり調査の継続が容易でなくなったり、閉館して調査を継続できなくなったりするケースもあったため。以上の理由より、進捗状況は「遅れている」としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染状況をみながら、公共図書館の開室状況に応じて所蔵調査を再開・継続する。他方、能楽師個人蔵の史料に範囲を拡大した調査も行いたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で当初予定していた史料調査費と出張費が発生しなかったこと等に拠る。これらについては次年度、史料調査費ならびに史料の複写・製本費に充てることを予定している。
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