2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K00152
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Research Institution | Kyoto University of the Arts |
Principal Investigator |
上村 博 京都芸術大学, 芸術学部, 教授 (20232796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方色 / 風景 / 植民地主義 / ピクチャレスク / 異国 / 芸術祭 / 自然化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は未曾有の感染症の影響で、十分な研究進捗がみられなかった。ひとつには勤務先の業務が多煩を極めて予定していた研究時間のほとんどを授業対応、学生ケアに費やさざるを得なかったことが理由である。しかしもうひとつには、研究計画上、当該年度に地方色を打ち出した制作活動や展覧会などの調査を行うはずだったのが、軒並み芸術イヴェントの中止や自粛が相次ぎ、また勤務先でも出張に制限がかけられたため、計画を大きく縮小し、大半の予定を延期せざるを得なかったという理由が大変大きい。そのため、年度内は移動を伴う調査研究は行わず、専らこれまでの研究成果のとりまとめ、またそれを踏まえた方法論の整理、そして遠隔で可能な範囲の資料収集に徹した。 わずかな成果としては、1920-30年代に世界的に流行したアール・デコのポスター等での異国表現が、過去のピクチャレスク的な画像の伝統を引き継ぎつつも、紋切り型表現の系列性によって一種の記号的な性格を前面に顕示するという点、そして同時にその平面的で硬質な輪郭が他者へのフェティッシュな執着を惹起するという点について知見が得られた。こうした記号へのフェティシズムは100年前の画像表現に限ることではなく、21世紀の今日でも、土地や人間という自然に対する感性に、画像表現がどのように振る舞うのかを考えようとするなら、示唆するものが多いと思われる。そのほか、2019年度に国際学会で行った発表を論文としてまとめて学術誌に掲載することができた。そのなかでは、地域芸術祭で展示される作品が、単一の作品としては土地との必然的な繋がりがないとしても、複数の作品群として新しい秩序を形成し、作品を順に訪問する行為によって、あとから作品の秩序が自然化される、という過程を論じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究初年度から2019年度までは、ほぼ問題なく研究を進めることができていた。しかし、2020年度は、上の研究実績についても記したとおり、感染症流行という不測の事態により、大きく進捗が滞ることとなった。研究費の使途として多くを占める研究調査旅費の大半が未使用であるのもそれが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症の終息はまだ見通せないが、徐々に文化芸術活動も再開、ないしはwithコロナでの再開をはじめており、これはこれで研究課題に関連した材料を提供してくれるものである。勤務先での緊迫度も徐々に緩和してきており、2021年度はある程度研究のペースを戻すことができるだろう。ただし、現時点でも調査研究の出張に制限があるため、感染症の流行情況如何によっては2020年度の遅れを取り戻すことが難しいかもしれない。
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Causes of Carryover |
感染症の影響で研究活動全般、特に研究調査旅行のほとんどを延期せざるを得なかったため。2021年度は各地の芸術イヴェントも徐々に再開される見込みであるため、研究費も徐々に使用頻度を高めたい。
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