2021 Fiscal Year Annual Research Report
Radio Broadcasting and the Formation of Musical Taste in Osaka before World War II
Project/Area Number |
18K00153
|
Research Institution | Osaka College of Music |
Principal Investigator |
西村 理 大阪音楽大学, 音楽学部, 教授 (00552738)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 大阪放送局(JOBK) / アレキサンダー・モギレフスキー / 奥屋熊郎 / 『大阪時事新報』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、戦前に大阪放送局(JOBK)が制作した音楽番組を調査し、それらに関する新聞や雑誌の言説分析を行うことによって、当時の大阪の人々の音楽趣味を明らかにすることにあった。研究実施の初期段階では、1925年6月(JOBKの開局)から1934年6月(日本放送協会の機構改革前)までのオーケストラが出演した音楽番組を軸に考察する計画であったが、音楽番組全体および出演者の調査を深めていくなかで、オーケストラに限定しないこととした。その結果、ラジオ番組を軸として1920年代から1930年代の阪神間の音楽文化を再考するという、次の研究課題が浮き彫りになった。 最終年度は、JOBKの文芸課長の奥屋熊郎が考案し、1930年3月から1934年5月まで放送された番組「系統的定期演奏」で中核を担ったヴァイオリニストのアレキサンダー・モギレフスキーが出演した番組を中心に研究を行った。その成果は以下である。 1、JOBKが制作した「系統的定期演奏」が全国中継されたのはごく一部であり、この番組の演奏曲は、そのすべて放送されたJOBK管内の音楽趣味の形成に貢献した。 2、モギレフスキーが「系統的定期演奏」で演奏した曲の傾向は、「名曲定期演奏」と銘打たれているにもかかわらず、現在でもレパートリーとして定着していない曲も多数、含まれていた。しかし、それは、すでに多くの人に受け入れられている曲以外も放送することで、娯楽の水準を高めるという奥屋の方針に沿うものであった。 3、大阪で早くからラジオ欄を掲載した『大阪時事新報』の記事の言説から、ラジオの聴取者が「系統的定期演奏」が大きな意義をもつことを意識し、モギレフスキーについての音楽的また個人的な情報を知り、曲の特徴をイメージしていたことが明らかになった。
|