2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K00180
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Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
泉 万里 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部長 (60243135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 攝一 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (70463297) [Withdrawn]
都甲 さやか 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (80706755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 寺社境内図 / 絵図 / 中世絵画 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度では、東福寺所蔵「三聖寺絵図」など、いくつかの作例の特別観覧を予定していたが、春以来の感染症の拡大による影響で、出張の制限もあり、寺社への特別観覧はすべて見合わせざるをえず、実現できていない。文献調査も、大学に所属していないため、この1年以上大学図書館等が使用できないほか、公立図書館もしばしば閉館となるなど、研究環境は悪化している。ただし、緊急事態宣言の解除時期に、6月25日九州国立博物館にて開催の展覧会「筑紫の神仏」で「観世音寺絵図」を確認するほか、秋には東京国立博物館ほかにて関連する絵図や、境内を背景とする肖像画(東照権現像)などを実見する機会をもった。残念ながら実見した結果「観世音寺絵図」については、中世の境内絵図ではなく、近世初期のものと判断できたので、本研究の対象からははずした。 いっぽう、本研究は2021年度が最終年度となるので、研究報告書の作成にむけ、論文執筆を続けた。そのうちの一本、「出雲神社絵図」(京都府 出雲大神宮蔵)については、同社蔵資料を照らし合わせることによって、新しい見方を提示することができた。すなわち、室町時代に作られたという見方もあった本絵図が、1368年の南北朝時代の出雲神社領の支配をめぐる争論のなかで証文として持ち出された資料の一部である可能性を指摘し、それによって、本図の制作時期を、遅くとも14世紀半と絞り込むことができた。その概要は、短文の作品紹介として『国華』1503号に掲載したが、本研究報告書では、短文の作品紹介では割愛した史料の引用も含め、論文としてまとめる予定である。 くわえて、3月13日に四天王寺仏教講座にて、中世寺社境内図研究を総括し、一般向けにかみ砕いた内容で講演する機会を得、準備を進めていたが、結果的に来年度へ延期となり実現していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による移動の制限、寺社の特別観覧の中止などにより、研究対象を2019年度の時点で調査終了したものに狭めざるをえなくなった。それにくわえて文献調査も、近隣の大学図書館への部外者の利用が1年以上禁止されていることもあり、研究の進捗はやや遅れているという区分を選択せざるをえない。この状況の早期の改善はみこめないことは、年度が改まった現在、もはや明らかである。 また、研究をすすめていくうちに、その方向性を見直さざる得なくなった点として、禅律寺院の絵図に中国の禅律寺院の境内図からの影響について考究する方法がある。見直しが迫られた主な理由は、近年の建築史研究者の論文や、展覧会の開催によって、中国の建築様式の情報の流入や、日本での流布、活用について新知見が提示されたことによる。一昨年度以来中国の版本挿図なども、研究分担者とともに、調査を試みてきたが、はかばかしい結果を得られず、研究の方向性をみなおすこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の影響は今後も継続することを前提とし、ひとつでも多くの絵図について、40枚から50枚程度の論考をまとめ、中世の寺社境内図を、中世絵画史(南北朝時代~室町時時代)のなかに位置づけることをめざす。 報告書の完成を2022年1月末を目標として最終年度を終了する。報告書には、個々の絵図についての各論を数本と総論1本を掲載予定。原稿は2019年度刊行の「特別展聖域の美 中世寺社境内の風景」掲載の作品解説および論文「高野山の風景」を加筆し、展覧会開催による調査の成果を活用するほか、『大和文華』135号に掲載した「堺市博物館所蔵の「高野山図屏風」」を再録。各論としては出雲神社絵図、東山泉涌律寺図、報恩律寺七堂図、摂州細川荘絵図、園城寺境内古図を予定する。当初、三上古跡図についてもまとめはじめていたが、在地の古文書の整理と調査が必要なことが徐々に判明し、それは、美術史研究者一人の手に負えないものであると判断せざるをえず、成稿に至らない見通しとなった。研究報告書は、費用の許す範囲で部分図なども掲載したものとする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による出張や移動の制限、作品所蔵者への特別観覧依頼の見合わせ、調査すべき資料をそなえた公立図書館や大学図書館の閉鎖や、学外者利用禁止措置、調査に資する研究者との会合の制約などが次年度使用額が生じた理由。 次年度使用額の使用計画としては、本年度もコロナ禍による制約は継続することをみこして、おもに、報告書の充実のために使用することを計画。出張費などは必要最小限にとどめておく。
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Research Products
(1 results)