2018 Fiscal Year Research-status Report
古代性の指標としての様式-東地中海世界における古代末期壁画様式研究-
Project/Area Number |
18K00181
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
宮坂 朋 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (80271790)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 壁画 / 様式 / ローマ / 古代末期 / レバノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2世紀から5世紀の東地中海世界の壁画の様式の発展を明らかにし、ヘレニズム様式からのかけ離れを評価することにより、古代の終焉の時期を明確にすることである。研究方法は、ローマの専門図書館での古代地中海壁画に関する文献調査と、未だ集大成の作成されていないレバノンのローマ壁画に関する実地調査による、作品のカタログ化と編年から構成される。 平成30年度は、レバノンの政治情勢が安定しなかったため、ローマの専門図書館(エコール・フランセーズ)での文献調査のみを行った。発掘報告書や専門書などからレバノン壁画やローマ壁画の様式・技法・モデルなどに関する資料収集を行った。 その成果は、論文「ヴィア・ラティーナ・カタコンベ壁画の様式」(『弘前大学人文学部人文社会論叢』人文科学篇 第34号、2018年8月、1-17。)、 「古代末期におけるモニュメンタルな残虐場面」(『第25回ヘレニズム~イスラーム考古学研究』2019年、1月、49-70 . 「古代ローマの怖い絵―初期キリスト教美術の残虐場面―」(『弘前大学人文社会科学部 国際公開講座 2018 資料集』, 19-37. )にまとめ、学会発表「古代末期壁画における公的要素:アンノーナとローマ公共浮彫」(第25回ヘレニズム~イスラーム考古学研究会」、金沢大学、2018年7月22日)、弘前大学資料館第21回企画展『古代地中海世界の死後の世界』(会期2018年10月18日~12月25日)を開催し、一般向け講演を「キリスト教以前のお墓」(10月20日)、「キリスト教のお墓」(12月25日)行い、また「古代ローマの怖い絵―初期キリスト教美術の残虐場面―」『弘前大学人文社会科学部 国際公開講座 2018』を行って発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レバノンの政情が全く安定しているとは言えない状況なため、実地調査を行うことはできなかったが、文献調査については大きな収穫があったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、壁画文献資料調査とレバノンにおける実地調査により遂行されるので、今年度は文献調査に加え、レバノンの情勢を見極めつつ、実地調査を行いたい。レバノンにおける実地調査では、レバノンの国立博物館や遺跡に赴き、収蔵・保管される壁画の観察と記録、分析を行う。また、ローマの専門図書館での壁画文献資料調査により、カタログ作成を継続する。このためにレバノンおよびローマへの調査旅行のための旅費を申請する。レバノン実地調査においては、特にティール遺跡とベイルート国立考古学博物館を中心に、壁画の詳細な研究を行う。 カタログの内容として、技法、画材、フレスコ画の下地塗の方法、絵画面漆喰の仕上げの質、絵画の枠線・帯の幅や種類・色彩、装飾文の選択・大きさ・量・配置について出来る限り明らかにする。また人物像のスケール・容貌・プロポーション・ポーズ(コントラポストや4分の3面観など)、群衆表現、衣襞、ハイライト、ハッチング、影、大地の線、背景(風景、建築、無地)、奥行きといった、ヘレニズム様式を決定する要素について、記録する。その他、従来の絵画伝統とはかけ離れた様式の導入、たとえば、壁画におけるモザイク様式、石棺様式、公共浮彫の様式の壁画への導入などについても明らかにする。
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