2020 Fiscal Year Research-status Report
A study of the infuence of the induction of emotional feelings by "The Imaginative Playing-Method" on the mind and body of the human
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18K00206
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
武本 京子 愛知教育大学, 教育学部, 特別教授 (80144179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 康宏 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (40176368)
石原 慎 藤田医科大学, 医学部, 教授 (40329735)
川井 薫 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (50152898)
飯田 忠行 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (50290549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イメージ奏法 / 音楽と映像と言語 / 視聴覚融合 / 共感性 / 生化学的・心理学的分析 / トリプトファン代謝産物 / 脳腸相関 / 音楽が心身に与える影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究結果をもとに、新たにソルフェジオ音階を用いた楽曲を作曲し、これを実験に供した。ソルフェジオ音階とは174Hz、285Hz、396Hz、417Hz、528Hz、639Hz、741Hz、852Hz、963Hzの9種の音を指す。これらの音を用いた楽曲は、聴き心地が良く心身に何らかの良好な影響をもたらす可能性がある。近年、何の根拠もなくソルフェジオ音(単音)が身体に良いというマスメディアによる誇張が広がり、商品化さえされている。しかし、消費者に受け入れられること自体が何らかの効果を生じている証拠ではないかとも考えられる。したがって、本研究課題を進めるのにあたり、本年度はソルフェジオ音階による楽曲を用いた。実験方法は「イメージ奏法」を用いたイメージファンタジー(イメージ画像+演奏)を実験参加者に供与し、これまでと同じ実験方法により質問紙による状態不安得点と、唾液中生理活性物質の濃度変化を指標にソルフェジオ音階の効果の解析を行った。今回は新たに実験参加者の一部に目隠しをし、聴覚のみの入力と視聴覚入力との差異も含めて検討した。その結果、気分(mood)に関しては、目隠しした方が負の感情・気分が低下しなかった。一方、陽性の気分「活気」、「友好」については視聴覚対聴覚に差はなかった。すなわち、負の感情である「怒り」、「不安」などの亢進は音楽による誘導ではなく、色彩・言語による知覚感情効果であったと考えられた。逆に、陽性の気分は音楽だけで誘導されたことが示された。これは、音楽が喜びや幸福感をもたらすことを意味しており、個人の持つ記憶やそれらに裏打ちされた共感性に基づくものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、予期しなかったCOVID-19の急激かつ全世界的な流行により、人を対象とした実験が著しく制限された。そのため、2020年度は研究実績の概要で述べたソルフェジオ音階によるイメージファンタジー実験1度のみの実施であり、オキシトシンの測定は断念した。 これまでの研究結果から、「イメージ奏法」の視聴者ではトリプトファン代謝産物でありモノアミンであるセロトニンと、同じくトリプトファンの代謝産物でありアミノ酸であるキヌレニンが極めて似た増減を示し、両者からは高い相関係数を得た。近年、生化学、生理学領域では脳腸相関の検討が盛んであるが、セロトニンは全身の80%以上が腸にあり、従来、腸のエンテロクロマフィン細胞からの産生と考えられていたが、最近では腸内細菌叢(gut microbiome)でも産生されることが示され、末梢セロトニンは腸由来であることは確実となった。一方、キヌレニンは免疫関与物質であり、免疫細胞でのキヌレニンの産生は免疫寛容を示す一つの証拠となっている。体内で最大の免疫調節臓器は肝臓と腸であるが、両者にはともに異なるトリプトファンを代謝開裂する酵素を持つ。最近、腸に多量にあるIDOが注目され、regulatory T cellの調節にも関与している報告がなされている。我々の「イメージ奏法」視聴から得られた結果は、これら最近の免疫学を含む生理学の情勢とよく合致しており、脳腸軸を介した分泌を音楽と映像の同時供与が調節する可能性を示唆している。ここで、我々は大胆な仮説を立てた。それは、偏桃体など大脳辺縁系から生じる感情は負の感情であり、喜びや幸福感は感情ではなく気分であることから、音楽鑑賞によって生じる喜びのような感情の多くは気分であり、脳腸軸を求心性に上行した生理活性物質によってもたらされ、その腸側を調節するのがセロトニンである、ということに行き着いた。
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Strategy for Future Research Activity |
「イメージ奏法」は、音楽の人間への感情や気分への誘導効果をより強く表現し、一方で脳腸軸を介して免疫能にも関与して健康を増進する可能性が示唆された。これは、音楽と映像による情緒感情効果によるものが大きいと考えている。したがって、現在までの研究成果は、より感情励起に有用な方法を確立するための知的財産になる。今後、国際誌への投稿をするべく準備中である。また、得られた結果は現代の高齢化社会において音楽による生活の質の向上のための動機付けや代替医療への応用へとつながる。この目的を達成するために、演奏会や講演会で報告するとともに、今後は「イメージ奏法」を社会一般に還元するためにCDやDVDなどのプロダクツを製作し、普及することである。しかし、現在の音楽録音デバイスはその特性により周波数に限界がある。そこで、特別な広域周波数での録音技術を有するメーカーとの共同企画として製作するための研究を検討している。すでに計画は進んでおり、最終年度中には少なくとも試作品は作成できると考えている。このCDやDVDの製作は科研費の申請書に記載したように、音楽の持つ社会性の発展に寄与するものと期待される。
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Causes of Carryover |
昨年度は、コロナ禍にあり、実験の結果の分析ができない状況にあり、結果が出るのが遅くなってしまった。その中から「イメージ奏法」に よる音楽を視聴することで、どのようにストレスの軽減効果が得られるかについて心理的・生理的な指標から導いた。その結果、楽曲の持つ喜怒哀楽の変化が被験者の体験や精神状態に響き合い、脳腸相関により、各種の抗酸化能や免疫能の亢進の可能性が示された。そこで、研究結果を反映するCDやDVD制作を行い、代替医療への応用や、QOL向上を視野に入れた音楽の在り方を公表する。本研究の学術的独自性と創造性、音楽家と心理学の専門家及び医師を含む研究組織により検討し、音楽による効果を可視化し、音楽がもたらす効果を心がくじけかけた人や高齢化社会に還元することを目指す。ストレス軽減に役立つ楽曲を「イメージ奏法」により分析し、音源として残すことで、心病む人の生活に幸福感をもたらし、心理的ストレスが軽減できるものと期待される。
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Research Products
(6 results)