2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study of the Relationship between Artistic Activity and Activism for LGBT Human Rights in Japanese Society
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18K00225
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Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
山田 創平 京都精華大学, 人文学部, 教授 (30554315)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アート / 社会的包摂 / 表現の自由 / 婚姻の平等 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「アートによる社会的包摂」の可能性、とりわけ性的少数者(LGBT)と芸術/アートとの関連について考察する。現在の日本社会においてLGBTが置かれている社会的排除の実態をふまえ、その実態に対して芸術/アートが果たしうる役割を知ることは、今後の我が国の文化政策のありかたに対して、重要な提言となり得る。よって当該研究領域の基盤形成は社会的にも有用である。 欧米各国では、LGBTに対する差別や社会的排除は、女性の人権や公民権運動などに連なる重要な人権問題であると理解されている。そのような市民意識の変化はLGBT当事者やアライ(支援者・理解者)による権利運動の賜物だが、それらの運動は社会に、同性婚あるいはパートナーシップ制度の制定という制度上の大きな変革をもたらした。これらの制度は先進諸国をはじめ現在多くの国々において導入されている。同性婚は結婚の概念を拡張し、多様な人間関係を法的に承認可能にしていることから、社会保障や社会包摂の観点からみても重要かつ画期的な実践として位置づけられ、長期的にはLGBTを超え、広く市民社会全体の福祉向上に寄与しうる制度と考えられる。この潮流は、アジア諸国にも波及し、すでに台湾での同性婚の法制化が現実のものとなっている。 本年度は以上の問題意識、学術的関心に基づき、8月1日~8月6日にかけて、台湾台北市で開催されている台北ビエンナーレの取材を行い、同芸術祭の芸術監督であるウー・マーリ氏に単独インタビューを行った。同取材内容は通訳を介して行われ、全編が文字起こしされた。また国内での動向に関しても引き続き調査が行われた。これらの作業により得られたデータは今後の研究内容総括に用いられることとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、当該年度は8月1日~8月6日にかけて、台湾台北市で開催された台北ビエンナーレの取材を行い、同芸術祭の芸術監督であるウー・マーリ氏に単独インタビューを行った。ウー・マーリ氏への取材は、関係機関との折衝などを重ねてようやく可能になったもので、また同氏は世界的に注目されるアーティスト、キュレーターであるものの、日本国内ではあまり紹介されていない。よって本インタビューは非常に貴重な機会となったものと思われる。同取材内容は通訳を介して行われ、全編が文字起こしされた。調査データは今後活用される。また本年度も引き続き国内での動向に関して調査が行われたが、大学関係者などへの取材を予定していた年度末には新型コロナウイルスの影響により移動制限が生じたため、十分な調査を完遂することができなかった部分がある。今後、本年度中に実施予定であったインタビュー調査、文献調査などを行いつつ、研究内容の総括を行ってゆくこととなる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査、フィールドワーク、インタビューなどで多くの音声情報、またその音声情報を文字起こししたデータを入手している。今後はそれらのデータを分析し、研究内容の総括を行ってゆくこととなる。ただ前述したように、大学関係者などへの取材を予定していた年度末に新型コロナウイルスの影響による移動制限が生じた。またこの移動制限や、対面調査の困難さがいつまで続くかは現状ではわからない状況である。 今後の社会的な状況を注視しながらではあるが、現状において十分な調査を完遂することができていない部分について、随時補足をしながら、十分な新型コロナウイルス感染対策を行ったうえでインタビュー調査、文献調査を進めてゆきたい。その上で研究内容の総括を行ってゆくこととなる。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた大学関係者、NGO関係者などへの取材、インタビュー調査、フィールドワークの実施が、新型コロナウイルスの影響により難しくなったためである。
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Research Products
(1 results)