2019 Fiscal Year Research-status Report
日本統治下の台湾における歌舞伎・浄瑠璃史の構築―現地資料に基づく基礎研究と考察―
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18K00234
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中尾 薫 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (30546247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日置 貴之 白百合女子大学, 文学部, 准教授 (70733327)
王 冬蘭 帝塚山大学, 経済経営学部, 非常勤講師 (80319920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 台湾 / 演劇 / 歌舞伎 / 浄瑠璃 / 義太夫 / 劇場 / 興行 / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1895年から1945年まで50年におよぶ日本統治時代台湾における歌舞伎興行、浄瑠璃興行の実態を明らかにし、台湾における歌舞伎・浄瑠璃史を構築することが目的である。そのために、『台湾日日新報」を中心とした資料調査に基づき、展開の実態、組織の成立過程、興行の場所、興行の関係者などを、明らかにする。 二年目にあたる2019年度は、初年度(2018年度)に国立台湾図書館にて収集した『台湾日日新報』等の歌舞伎興行、浄瑠璃興行、劇場についての記事の整理、分析に注力した。 研究課題全体としては、「内地」における演劇興行との連関性を明らかにするという共通目標を掲げ、個々の問題設定に基づいて研究を深めることとした。研究代表者の中尾は、植民地研究や帝国主義のなかで構築される演劇史という視点に基づき、初期の劇場文化の形成過程を明らかにしようとしている。研究分担者の王冬欄は、台湾の伝統演劇である歌仔劇に着目し、日本時代劇の影響について考察を深め、口頭発表「台湾歌仔劇における日本演劇の影響」(2019年獅城国際戯曲学術検討会、2019年11月10日)を発表した。同じく研究分担者の日置貴之は、「台北役者評判記」(『台湾日日新報』1903年1月21日~2月18日)の翻刻を完了したほか、シンポジウム「明治~大正期の演劇/演芸と近代小説の編成-メディア間の相互交渉とアダプテーションの視点から」(日本近代文学会2019年秋季大会、2019年10月27日・新潟大学、大橋崇行・柳瀬善治・神林尚子・日置貴之(ディスカッサント))において、植民地時代の台湾のことについて言及をした。研究協力者の川下俊文は、大隅太夫の台湾興行について調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年2月末に台湾調査を行い、台北にて補足調査、また高雄にまで調査を広げる予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から調査を延期した。また、中尾が2020年に予定しているシンポジウムも開催の目途がたっておらず、日置が口頭発表を予定していた日本演劇学会大会も中止が決定している。そのため、やや計画より遅れている。 また、早稲田大学演劇博物館にて開催されたシンポジウム「日本演劇・映画人の〈台湾時代〉―植民地舞台にみる文化的交錯―」 (開催日:2019年11月13日)など関連する研究成果も発表されており、こうした最新の研究を踏まえた研究計画の練り直しや、交流計画といった新たな課題に対応する必要にも迫られため、全体としてやや遅れているという評となった。 ただし、2019年度は、ほぼすべてが電子媒体化され共有している資料を用いて、個々の問題点を深めている段階であり、致命的な遅れとはなっていないとは考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾への現地調査の目途が立たないため、すでに入手している資料の分析に重きを置く。2020年12月~2021年2月ごろに、研究成果の発表のためのシンポジウム開催を計画しており、そのための準備を行う。 調査が進むにつれ、調査すべき点は広がりを見せており、すでに発表されている関連研究の摂取、研究交流が不可欠と考えている。本研究は歌舞伎・浄瑠璃(義太夫)興行に注目している点で意義があると認識しているが、これまでに構築されてきている、映画、新派劇、新劇を中心とした諸研究との融合が必要とも感じており、継続課題の申請を視野に入れながら、研究成果の構築に努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた台湾調査を次年度以降に延期したため、次年度使用額が生じた。状況を見極めながら、夏以降の調査の可能性を探っていくが、難しい場合は、2020年12月~2021年2月ごろに開催を計画しているシンポジウムの充実に計画を変更する予定であある。
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Research Products
(2 results)