2018 Fiscal Year Research-status Report
ザムエル・シャイトの声楽作品研究―「ドイツオルガン音楽の父」再評価への試み
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18K00242
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Research Institution | Tokyo Junshin University |
Principal Investigator |
鏑木 陽子 東京純心大学, 看護学部, 教授 (10638357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大角 欣矢 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90233113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ザムエル・シャイト / 複合唱音楽 / ドイツ・ルター派 / 筆写譜 / 校訂譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.【校訂譜の入力】ザムエル・シャイト全集第4巻『カンツィオネス・サクレ Cantiones sacrae』は1933年に出版されたものの、絶版のまま現在に至っている。所収曲全38曲のうち、合唱ピースのかたちで個別に出版されていない作品、あるいはIMSLP等のパブリックドメインに未だ公開されていない作品を優先して、楽譜ソフトの入力、校訂作業を進めた。一方、本プロジェクトの前に取り組んだ平成27~29年度のプロジェクト(15K702195)において作成した校訂譜(SSWV19とSSWV32)をさらに精度を上げる必要があることが判明した。成果発表演奏の際に演奏協力者から指摘された音の間違い、楽譜の使い勝手等を反映させるため、この2曲の校訂譜の再編成し、改訂版作成にも着手することとなった。2.【演奏実践に関する情報整理】『カンツィオネス・サクレ』は8声の複合唱曲であり、その初版譜(1620年)は8冊のパート譜で出版された。ベルリン国立図書館所蔵の『カンツィオネス・サクレ』パート譜の筆写譜(マイクロ資料)と初版譜(1620年)とを並べて表示し、当時の歌い手がパート譜から書き写して演奏用の楽譜を作成していたことの実例を示す資料を作成した。3.【論文執筆】15K702195のプロジェクトでの成果発表を再構成し、さらに本プロジェクトの展望を盛り込み、論文を執筆した。この論文は日本オルガン研究会年報『オルガン研究2018』(2019年5月発行)に巻頭論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
校訂譜の作成が当初の予想以上に複雑であり、研究会補助者への楽譜ソフト入力の指示に関する検討を行っていたため、作業に遅れが生じている。しかし、次年度は遅れの挽回ができる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.【当該史資料の現物確認調査】『カンツィオネス・サクレ』とともに本プロジェクトの研究対象としている『コンツェルトゥス・サクリ Concertus sacri』(SSWV71-82, 全14曲)の初版譜(1622年)の現物確認をレーゲンスブルク司教座中央図書館において行なう。楽譜の装丁、紙質、インク、使用状況、書き込みの有無、サイズ等を調査し、17世紀前半ドイツにおける楽譜出版事情を知るための手がかりとしたい。2.【史資料のデジタル画像化】『コンツェルトゥス・サクリ』は合唱と器楽合奏群とオルガン通奏低音から成る大規模な編成の曲集であり、そのパート譜は合計17冊に及ぶ。ベルリン国立図書館所蔵の『コンツェルトゥス・サクリ』筆写譜のデジタル画像化を依頼し、入手する。ベルリン国立図書館ではSSWV71, 73, 79, 82の4曲を所蔵している。3.【スコア作成】『カンツィオネス・サクレ』の初版譜と1933年版を照らし合わせながら、楽譜の入力作業を進めていく。楽譜の体裁については、随時、研究協力者である声楽家と検討を加えながら、整えていく。 4.【研究発表演奏】2020年1月ないし2月に『カンツィオネス・サクレ』の研究発表演奏を立教大学諸聖徒礼拝堂において行なう予定である。演奏予定曲目(8曲程度を予定)は研究協力者と協議の上、2019年7月までに確定する。5.【演奏形態検討】本プロジェクトの最終年度となる2021年1月ないし2月には『コンツェルトゥス・サクリ』の中からも1曲を演奏する予定である。器楽合奏を伴う大規模な編成となるため、楽器編成、使用楽器についての検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
校訂譜作成のための楽譜ソフト入力を研究代表者自身が行なったため、研究補助者への人件費が発生していない。次年度は研究補助者への楽譜ソフト入力を依頼する分量を増やす予定である。また研究協力者との演奏に関する協議を重ねていく。年度末に研究発表演奏を実施する予定であり、演奏者への謝礼、リハーサル会場費等に充てることになる。
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Research Products
(1 results)