2019 Fiscal Year Research-status Report
ザムエル・シャイトの声楽作品研究―「ドイツオルガン音楽の父」再評価への試み
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18K00242
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鏑木 陽子 (米沢陽子) 立教大学, キリスト教学研究科, 特任教授 (10638357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大角 欣矢 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90233113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ザムエル・シャイト / 複合唱音楽 / ドイツ・ルター派 / 筆写譜 / 校訂譜 / 実演 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、校訂譜の再検討、筆写譜の現地調査、成果発表の機会としてレクチャーコンサートの開催を予定し、準備を進めた。 [研究代表者・米沢陽子] ザムエル・シャイト『カンツィオネス・サクレ』のうち、Nr. 6 O Domine Jesu Christe SSWV6、Nr. 10 Duo Seraphim SSWV10、Nr. 11 Gelobet seystu Jesu Christ SSWV11、Nr. 17 Gott der Vater wohn uns bey SSWV17、Nr. 20 Prima pars: Tulerunt Dominum: Prima pars SSWV20、Nr. 21 Secunda pars: Cum ergo fleret: Secunda pars SSWV21、Nr. 24 Prima pars: Richte mich Gott: Prima pars SSWV24、Nr. 25 Secunda pars: Sende dein Liecht: Secunda pars SSWV25、Nr. 27 Lobet den Heren, er ist sehr Freundlich SSWV27、Nr. 33 Zion spricht der Herr hat mich SSWV33、Nr. 34 Quaerite primum SSWV34、Nr. 38 Lobet den Herren in seinem SSWV37 以上、12曲の校訂作業を行い、校訂譜を作成した。校訂譜に基づき、楽曲分析を行ったところ、不協和音を斬新に、しかも効果的に使用している箇所が見つかった。シャイトの作風は保守的であり、作曲上、あまり大胆な和声付けはしないと捉えていたが、この最初期の声楽作品において、若きシャイトが和声に関する果敢な試みをしていることがわかり、収穫であった。このような和音の使用は同時代のシュッツがそうであるように、歌詞との関係によるものであることも確認できた。 [研究分担者・大角欣矢] ドレスデン国立図書館、ベルリン国立図書館において『コンチェルトゥス・サクリ』筆写譜の現地調査を行った。また上記12曲の歌詞対訳および楽曲分析を行ない、レクチャーコンサートのための曲目解説執筆、講演準備を行った。 [研究協力者・サリクス・カンマーコア]レクチャーコンサートのリハーサルを4回実施し、この作品を「神々しい響き」であると評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の2019年度成果発表の機会を2020年2月29日(土)に「レクチャーコンサート」(立教学院諸聖徒礼拝堂)として設定し、演奏、曲目解説、楽曲分析、歌詞対訳の準備を進めていた。しかし、新型コロナウィルス感染症拡大防止対策のため、開催を見合わせることとなった。本研究は、校訂譜を作成し、校訂譜に基づいて演奏し、それによってシャイトの音楽を再評価することに重点を置いている。その中核となるレクチャーコンサートによる発表の機会が失われてしまい、演奏機会の見通しが現在のところ立っていない。当初は6月か7月にはレクチャーコンサートが再設定できるのではないかという見通しでいたが、5月10日現在、大学閉鎖中のため会場となる学内礼拝堂の使用予約もできない状態である。緊急事態宣言による自粛が緩和されない限り、実現は難しい。それゆえ、研究に基づく演奏実践、演奏実践によるシャイトの音楽の再評価という本研究の中心となるところが実現できていない状況である。 校訂譜の作成順序は、これまで出版されていない、またはIMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)に発表されていない作品を優先している。2019年度においては12曲の校訂譜を完了したが、38曲中、次にどの作品の校訂譜を作成するかを検討するまでに至っていない。また『コンチェルトゥス・サクリ』の演奏(2021年2月成果発表レクチャーコンサート)も行う予定でいるが、選曲に至っておらず、演奏方法、編成等の検討には未着手である。これについては近日中に研究協力者との検討に入る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度分の研究成果発表(レクチャーコンサート)を2020年度内に行いたいと考えている。しかし、2021年2月には3年間の研究成果発表としてのレクチャーコンサートを予定している。そのため、2019年度分のレクチャーコンサートに関しては無人演奏会を収録、Youtubeにて発表すること等も視野に入れている。もしくは、2021年2月開催予定のレクチャーコンサートに組み込む形で、拡大コンサートをする可能性も含めて検討したい。なお『カンツィオネス・サクレ』の校訂作業未着手の作品の楽譜入力作業を研究協力者とともに進め、初版譜との照合、校訂作業を進めていく予定である。同時に、該当曲の歌詞対訳、楽曲分析も行う。またドイツとスロヴァキアにおける現地調査(筆写譜に関する調査)も新型コロナウィルス感染症が収束に向かい、年度内に渡欧が可能となるならぜひ実現したいと考えている。 2020年度のレクチャーコンサートにおいては、『コンチェルトゥス・サクリ』の中から1曲を取り上げて演奏する予定であるので、選曲、楽曲分析、歌詞対訳作成、演奏方法検討等、準備を進めていく。 2020年度は本研究の最終年度となるため、本研究のテーマである「シャイトの声楽作品の再評価」のまとめに入らなければならない。演奏実践を通した「再評価」は年度末になるが、楽曲分析を中心とした研究は校訂譜をもとに進めていく予定である。 2019年度分、2021年2月開催予定のまとめのレクチャーコンサートは、良質の画像・音で収録し、Youtubeにて一般公開し、校訂譜とともに、本研究の成果を広く社会に還元したい。
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Causes of Carryover |
研究代表者が現地調査(ドイツの図書館における筆写譜の現物確認)を諸事情により見合わせたため、渡航費・滞在費として計上した予算を執行しなかった。2020年6月にドイツとスロヴァキアにおける現地調査をしたいと考えていたが、新型コロナウィルス感染症の影響で出入国が厳しい状態が続いており、渡欧の見通しが2020年5月現在立っていない状況である。渡航制限が解除されれば秋以降に、研究分担者とともに現地調査を実行する予定である。 また、研究成果発表を予定していたレクチャーコンサートが新型コロナ感染症拡大防止策のため、開催見合わせとなり、研究協力者であるサリクス・カンマーコアに対する出演料が発生しなかった。レクチャーコンサートの開催時期についても、学内の礼拝堂使用の見通しが現段階では立っていない。会場を学外に移す、あるいは無人演奏会を実施し、Youtubeで成果発表を行う等の対策を検討中である。学外で行う場合には会場使用料が発生するので、次年度使用額の一部をそれに充てたい。また、Youtubeの公表にとどまらず、CDあるいはDVD制作も検討していきたい。
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Research Products
(3 results)