2019 Fiscal Year Research-status Report
園城寺所蔵天台関係聖教の調査による中世天台談義書を生成するネットワークの解明
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18K00274
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
渡辺 麻里子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (30431430)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 談義書 / 談義 / 論義 / 法華経 / 天台三大部 / 園城寺 / 三井寺 / 真祐 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の2019年度は、園城寺聖教の調査を3回、および身延山久遠寺身延文庫調査を1回行う計画であった。実績としては、身延山久遠寺身延文庫における調査は予定通り1回(9月)の実施であったが、園城寺の聖教調査は、4月に2度、6月・7月・9月の計5回の調査と、当初計画以上の回数を実施した。また補助的調査として、東京大学附属総合図書館(4月)と、早稲田大学図書館(4月)における資料収集とを行った。さらに別途、門跡寺院資料を有する所蔵者・所蔵機関において、園城寺の三大部関係資料等の比較検討を行う必要が生じ、深浦円覚寺の資料調査(7月)および叡山文庫調査(10月)を実施した。 園城寺関係資料の調査研究としては、予定していた三大部関係資料の調査研究は順調に進めることができ、真祐『法華文義集』の調査も予定通り実施し、論文発表の準備を進めることができた。しかし一方で、予定していた資料とは別に、新しい談義関係資料を発見することができたため、園城寺における三大部関係資料の調査はさらに来年度も引き続き実施することとした。身延山久遠寺身延文庫調査も、園城寺の談義関係書目について、かなりの部分について調査を終えることができたが、こちらにおいても新たに発見した書目があり、これらの書目については来年度も引き続き調査を実施したいと考えている。 調査以外の研究実績としては、6月に名古屋で開催された説話文学会大会に参加し、新しい知見を得ることができた上、他の研究者と談義書関係の研究推進に関する情報交換も行うことができた。また11月には研究成果の公開のため、天台教学大会((於)大正大学)に参加し、三井寺の中世・近世における談義書について研究発表を行った。研究発表の内容は、論文化し学会誌において刊行する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
園城寺における調査については、計画していた法華三大部関係資料はおおむね順調に調査を進め、予定していた書目については、ほぼ予定通り、調査を実施し、写真撮影を行うことができた。調査の過程で新しい発見があったため、関連する資料を所有する叡山文庫や東京大学附属総合図書館、早稲田大学図書館などの調査が必要となったが、それらも順調に行い、成果を得ることができた。しかし一方で、計画時には予想していなかった新たな談義関係書目が発見されたため、調査回数を計画以上に増やして実施し、調査および資料収集に努めた。経費については、図書費などに計上していた予算を旅費に組み替えるなどして実施した。かなりの部分は対応できたが、まだ調査しきれない書目も残しているため、来年度以降の調査についても、計画した調査を進めつつ、新たに発見した書目については、3年目・4年目において、調査方法や内容を少し組み替えるなど、計画の若干の修正を行いつつ研究を進めることとする。 身延山久遠寺身延文庫における三井寺談義関係書目の調査も予定通り進めることができたが、こちらでも予定していなかった新たな発見があり、予想以上の成果をあげている。当初予定では、身延山久遠寺身延文庫調査は今年度までに終了としていたが、来年度も継続して身延山久遠寺身延文庫の調査を行う必要が生じたため、来年度も身延山久遠寺身延文庫の調査を実施することとする。 これらの調査や研究成果については、11月に大正大学で開催された天台教学大会という学会において口頭発表するなど(発表題目「中世近世における三井寺の談義について」)、成果報告にも結びついた。今後、論文化し刊行できるように準備を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には予定通り進めるが、計画を修正する点が3点ある。 まず、1点目であるが、3年目の2020年度は、本務校を異動したため、前任校で使用していた研究機材が使用できなくなった。そこで新たに必要機材を整える必要が生じたため、科研費の一部を使用して、研究機材を調達する。 2点目として、社会情勢の変化として、新コロナ感染対策として、県外移動が当面の間できなくなった。園城寺や身延山久遠寺など県外での資料調査が可能になるのは、年度の後半になる可能性が高く、あるいは今年度はできなくなる可能性がある。その場合は、3年目と4年目の計画を入れ替えるなどの調整を行い、例えば2年目までに撮影収集している資料の整理や分析を中心に今年度の研究を遂行することとして、成果報告は予定通り進められるように努力する。なお同じ理由で、大人数が密集して集まることができないことから、学会などの中止・延期なども漸次決定しているが、オンライン発表などに対応する学会も少しずつ出ているようなので、発表のできる機会を模索しつつ、成果報告・公表を実施したい。 3点目に、2年目の調査時には計画していなかった新たな資料が多数見つかったため、それに対応して研究の方法を修正しつつ進める。予定した以上に資料点数が多く存在していることが判明したり、全く予想しない資料が発見できたことは、望外の結果である。社会情勢の影響で、2020年度に調査回数を増やすことはできない可能性が高いが、まだ研究期間は2年が残っているため、最終年度を含めて計画を柔軟に調整しながら、今年度の調査研究において成果を挙げられるように工夫し、最終年度に成果が発表できるように進めていきたい。
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Research Products
(1 results)