2020 Fiscal Year Research-status Report
園城寺所蔵天台関係聖教の調査による中世天台談義書を生成するネットワークの解明
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18K00274
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
渡辺 麻里子 大正大学, 文学部, 教授 (30431430)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 園城寺 / 尊契 / 真祐 / 法華文義集 / 勧学院 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目2020年度の実績としては、説話文学会9月例会(10月4日(日)実施)において「園城寺の学問―園城寺勧学院聖教を基点として―」をテーマにした例会を主宰し、園城寺資料についての調査成果と意義を報告し公開できたことである。当初、学会は園城寺を会場とした集会とし、非公開の光浄院や勧学院の特別拝観や、園城寺所蔵資料の特別展観も合わせて実施する計画であったが、コロナ感染拡大により、集会が不可能となったため、園城寺を会場としつつもオンラインでの配信に変更して実施した。オンライン配信でも、全国から多くの方々の参加が得られ、議論を深めることができた。 具体的には、第一部で苫米地誠一氏による寺内修学制度についての講演、第二部では、三名が調査報告を発表した。渡辺の主旨説明の後、石井行雄氏が園城寺蔵資料の全体像、中川仁喜氏が寺門の法華大会について、渡辺が園城寺の学問を考える上で重要な資料を紹介した。最後に、園城寺所蔵資料の中で特筆すべき資料をカメラを通じて公開した。この例会の成果は、2121年刊行の『説話文学研究』に掲載する予定である。 その他の成果としては、2020年10月刊行の『天台学報』62号に「中世における園城寺の学問と談義―尊契を中心にー」という論文を掲載し、11月の天台宗教学大会において、「園城寺蔵『法華文義集』について」という題目で、園城寺資料のうち真祐作『法華文義集』に関する口頭発表を行った。 コロナ感染拡大により、当初計画していた園城寺および関係各所への資料調査がほとんど実施できなかったが、その代替として。これまで収集してきた資料の分析や考察を行い、研究計画全体が円滑に進むように努めた。 また2020年度は、研究代表者の勤務校異動により、研究環境を整備し直す必要が生じた。研究機材を整え、園城寺資料および関連資料やデータの引き継ぎを行い、円滑な研究の継続に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況として、予定通り進めなかった点と、予定以上に進められた点の両面があるため、合わせて「おおむね順調」と判断した。 予定通り進んでいない点は、コロナ感染拡大という社会状況の影響を受けて、園城寺(滋賀県)の資料調査をはじめ、叡山文庫(滋賀県)や身延文庫(山梨県)など、関連資料の調査がほとんど実施できなかったことである。3年目の2020年度は、園城寺および園城寺関連資料を所蔵する叡山文庫などの調査を積極的に行いたかったが実現できなかった。本研究課題は、現地に行っての資料調査や写真撮影による資料収集が主体であるため、調査および資料収集が実施できないと研究が進められない。園城寺においては園城寺蔵『三大部見聞』『尊談文集』などの調査および写真撮影を進め、身延文庫や叡山文庫では、関連資料の調査を実施する計画であったが、予定通りの日数・回数の実施ができなかった。 また研究代表者が勤務校を異動したため、研究設備を整え研究を円滑に継続する状態を作るために少々の時間を要した。これらが、予定通り進まなかった点である。 しかし一方で、調査成果の公開など、予定以上に実施できた点もある。当初予定では、研究成果をまとめて広く発表するのは最終年度の2021年度を計画していたが、予定よりも大がかりな企画で、1年早めて報告が実施ができたことは大きな成果であった。個人的な研究発表は予定通り行ったが、それとは別に、説話文学会という学会の例会で園城寺所蔵資料についての特集企画を組み、講演とシンポジウムを合わせて実施し、学会全体に広く公開することができた。またオンライン開催での資料展観も実施するなど、予定以上の成果を上げられた。大規模な成果報告が実施できた点では「当初の計画以上に進展」と言える。数は少ないが実施できた調査では、予定通りの成果を得られた。 以上を総合的に考えて「おおむね順調に進展」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施できなかった叡山文庫(滋賀県)をはじめ、各所の資料調査を実施する。現在はまだ調査が実施できる状況ではないが、コロナ収束の後、資料調査のための出張が可能になった段階で実施する。時期は秋以降と見込まれるが、調査が実施可能なタイミングで集中して調査日程を組み、資料調査および写真撮影による資料収集を、より効率的に実施する。 今年度は4年目最終年度となっているため、成果報告を報告書にまとめて刊行する計画である。調査が実施できる回数・日数や内容によっては、報告書に取り上げる書目や内容についての変更が必要になるかもしれないが、いずれにしても報告書の刊行は、予定通り実施する方向で進めていく。 秋以降になっても社会状況が落ち着かず、資料調査がどうしても実施できないような場合には、新たな資料の調査や収集を断念せざるを得ない。その場合は、資料収集についての実施計画を縮小し、資料収集が実施できている範囲内での資料分析をより深く行うこととする。当初、資料収集と資料分析について計画していた比重の見直しを行って、より分析に重きをおいた研究に切り替え、時間をかけて成果を上げられるように対応する。 また調査先の変更も考える。叡山文庫など関西圏を中心に計画を立てているが、東京都内機関の調査など、調査先を実施できる範囲に変更して研究を遂行することも対応策として考える。 研究全体としては、資料調査の点数が、予定より減少することになる可能性も生じる。しかし園城寺所蔵資料については、すでに多くの書目について調査を終えているため、収集済みの資料分析に注力するように修正する。最終的に研究全体として成果があげられるように工夫し、研究の円滑な推進を目指して対応する。
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Research Products
(3 results)