2022 Fiscal Year Research-status Report
〈大衆文学〉の新人文学賞に関する総合研究―「『サンデー毎日』大衆文芸」を軸として
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18K00276
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
和泉 司 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 准教授 (50611943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | サンデー毎日 / 大衆文芸 / 文学懸賞 / 文学賞 / 直木賞 / 千葉亀雄賞 / 邱永漢 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、1本の論文を発表し、23年度発行の雑誌に掲載予定の論文を1本寄稿済みである。 まず、豊橋技術科学大学の論集である『雲雀野』45号に「戦前期『サンデー毎日』の賞イベント:「『サンデー毎日』大衆文芸募集」と第一回千葉亀雄賞を中心に」を発表した。これは『サンデー毎日』が1920年代に開始した大衆文芸の小説テクストを集め、そこから紙面を支える作家を育成・輩出させようというシステムを支えた「大衆文芸募集」という懸賞の定期的実施の意義と、おそらくは芥川賞・直木賞の設置に刺激されて創られたと思われる「千葉亀雄賞」の役割について論じたものである。いずれもこれまでの文学研究ではあまり注目されてこなかった企画だが、『サンデー毎日』が大衆文芸作家を多数輩出する揺籃の雑誌であったことを考慮するとき、これらの文学懸賞が後に与えた影響は非常に大きいものとと考え、懸賞を行った。 そして、現在校正中(2023年5月)である論文は、「日華断交後の邱永漢」(『現代中国研究』50号掲載予定)である。戦後に直木賞受賞作家として大衆文芸作家の一人という立場で日本の文壇に登場した邱永漢は、大衆文芸の世界では望むような活躍を行えないと考え、徐々に活動分野を変えていった。と同時に、邱永漢が日本の文壇、論壇で生き延びようとした時代は、邱永漢の「台湾出身の亡命者」という立場から見ると、その社会的な存在が非常に不安定な状態に置かれるものであった。それを1972年の日中高校正常化と日華断交という歴史的転換点から考え、この事件が一個人である邱永漢を「国籍」という点から大きく揺さぶり、邱永漢がそれに応じた生き方を模索し生き抜いていった状況について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間の延長、さらに再延長が許可されたので、新型コロナウィルスの影響による研究調査の遅延分を少しずつ取り戻すことができている。2023年度の再延長期間を利用して、当初計画していた「サンデー毎日」の大衆文芸の懸賞に参加した作家たちの個別調査・研究を、全体像としてまとめる用意は整えられてきた。故に、現時点での進捗は順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響による行動規制がほぼなくなったので、これまでいけなかった図書館、資料館などでの調査をできる限り行い、さらに収集してきた資料内容を精査して、研究計画の全体像をまとめる予定である。従来は2022年度で終了予定だったが、特別措置としてもう一年の再延長が許可されたので、研究費自体の残額はわずかだが、これまで集めてきたもの、調査して得た知見の集大成を行いたいと思っている。
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Causes of Carryover |
2022年度は出張での調査研究が徐々に可能になった年度であったが、特に航空券が高騰したため、当初計画していた回数の出張ができず、やや中途半端な額が残ってしまった。そのため、残額での出張ができなかった。再延長による最終年度である2023年度も、航空運賃は高騰しており、出張は難しいと考えているが、この残額を調査資料の購入費または複写費などに活用し、研究計画の最終的なまとめと論文化を実施しようと考えている。
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Research Products
(1 results)