2021 Fiscal Year Annual Research Report
A documentary research of the editing process of Shin-cho, with focus on the letters to Narasaki Tsutomu
Project/Area Number |
18K00283
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
加藤 禎行 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (10318727)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 楢崎勤 / 新潮社 / 編集者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、昭和戦前期の雑誌『新潮』の編集に従事した作家・編集者の楢崎勤に宛てられた諸家の書簡についての調査研究を主眼とするものだ。調査対象となる楢崎勤宛諸家書簡は、山口県立大学が所蔵する49通の書簡がその調査対象であった。近代以降の私信を資料として研究するこの研究計画は、私信の公開という問題に直面している。手紙の送信者について没後50年が経過していない場合は、 書簡もまた著作物であるという見地から、著作権法の保護を受ける。また書簡資料は著作物であると同時に、雑誌掲載等の公開・公表を前提として書かれた創作の原稿とは異なり、私信である。
日本著作権協議会刊行の『著作権台帳』は、個人情報保護の見地から、2001年第26版をもって刊行を停止している。こうした個人情報保護の時代において、楢崎勤ご遺族の連絡先については確認できているが、書簡の発信者のなかに、著作権継承者や私信の公開の是非を判断できるご遺族にコンタクトできない事態が継続的に起こっている。本研究計画は、調査対象となる近代書簡を、オープンアクセスができるような状態に移行させることが大きな目標であったが、その壁は思いのほか高いものでもある。
日本近代文学における書簡資料の調査・研究においては、研究成果の公表にあたって、書簡を執筆した著者の著作権継承者・遺族を探し出すことが、最終的な困難となる。本研究計画の研究期間はこれで終了となるが、公表に至っていない書簡について、書簡資料のオープンアクセスを目指して、事後的な研究は継続課題として残る。今後とも、書簡を執筆した著者の著作権継承者・遺族の探索は継続していかなければならないと考えており、本研究計画の研究期間終了以降も、機が熟した資料についてはオープンアクセスができる媒体での公開を行なっていく予定である。
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