2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the publication and dissemination of "Genpei Josuiki"
Project/Area Number |
18K00295
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
岩城 賢太郎 武蔵野大学, 文学部, 准教授 (40442511)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 源平盛衰記 / 流布本 / 古活字版 / 整版 / 乱版 / 軍記物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度公開の論文で書誌情報を報告した無刊記整版本『源平盛衰記』は、全25冊が唐草文様空押しの丹表紙を有し、本文の摺刷状態から見て、寛永・正保頃版行と推定される敦賀屋久兵衛奥付本と同時期のものであるが、全冊の前表紙及び後表紙の表皮下に、元和寛永古活字版の反古が半丁ずつ挟み込まれている。調査の結果、当該の古活字版反古は、特定の巻や冊次が集中して用いられており、その古活字版丁には重複がない。従って摺刷の作業上で生じた刷反古の転用ではなかろう。当該本の版行の事情や経緯は分からないが、課題研究者は従前より、無訓漢字片仮名交じり本の古活字版本から、付訓漢字片仮名交じり本の整版は近い環境にあり、その製作もさほど時期を置かずになされたと推測していたが、その推測を補強する資料である。次の課題は、付訓漢字片仮名交じり本でありながら、整版と古活字版とが混在する『源平盛衰記』乱版である。付訓を含め本文がいかに生成されたのか追究する必要があろう。 研究上の本文の妥当性の問題等は別としても、『源平盛衰記』流布本の本文形成において、また近世から現代に至る『源平盛衰記』本文の受容において、根幹となる本文を提供したのは、やはり元和寛永古活字版である。『源平盛衰記』の本文や語彙を検討するに当たっては、慶長古活字版の本文に拠るのみでは十分でなく、あわせて元和寛永古活字版、乱版、無刊記整版の本文をも確認、比較する必要があろう。 なお、本年度の学会発表として報告したシンポジウム「日本文学の内なる翻案―王朝物語の変容と転生―」(令和4年6月11日、大妻女子大学・オンライン併行開催)における、パネリストとしての報告発表「『伊勢物語』と謡曲―中世における業平の形象とその展開―」は、一昨年度の研究成果における、『源平盛衰記』巻第48所収説話における『伊勢物語』『源氏物語』受容の様相から関連や問題を見出したことが契機となった。
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Research Products
(2 results)