2018 Fiscal Year Research-status Report
「帝国日本形成の物語」(西南・日清・日露各戦争の記憶)の成立に関する調査・研究
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18K00317
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 大祐 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90324889)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 東アジア / 帝国日本 / 太平記 / 記憶 / 境界線 / 在日 / 芸能 / 海港都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、当科研費に関わる論文執筆2本、学会・研究会発表計5回を行った。 学術論文については、9月、論文「亡命・拉致の文学」を、『東アジア文化講座』第3巻/小峯和明編『東アジアの文学圏』(文学通信、2019年度刊行予定)への寄稿論文として執筆した。また、同時期に「転生する『太平記』-吉村明道編『近世太平記』を中心に-」を、小峯和明・倉本一宏編『説話の形成と周縁 中近世篇』(臨川書店、2019年刊行予定)の寄稿論文として執筆した。 また、学会・研究会発表としては、第一に2018年7月14日、関西軍記物語研究会にて、「平清盛の「記憶」と海港都市神戸」を発表し、近代都市神戸における平清盛の「記憶」の在り方について概観・検討した。第二に9月1日、日本文学・環境学会(ASLE-JAPN)の全国大会・石牟礼道子氏追悼シンポジウムにおいて、「石牟礼文学における非定住芸能民の「記憶」について-『西南役伝説』を中心に-」という発表を行い、少なくない反響を得た。 第三に10月27日、韓国ソウル市郊外の檀国大学における日本研究のシンポジウムにて、「日本文学史における”境界線の政治=ポリティクス”について」と題して、近代日本帝国の言説空間において日本とその外部を分けける境界意識の在り方と前近代からの連続性について報告した。第四に11月10日、東京の「歴史の文体」研究会において、兵藤裕己著『後醍醐天皇』の書評報告を行い、近代日本の自国史認識における後醍醐天皇の意味について論じた。 第五に翌2019年3月10日、神戸の青丘文庫研究会において、「立原正秋と「混血」言説-小説『夏の光』と1945年夏の軍港・横須賀の都市空間を中心に-」という発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は科研のテーマに内在する多様なテーマに関して、論文執筆と研究発表を行った。各論文及び各研究発表はそれぞれ、従来の研究史であまり注目されてこなかった重大な論点を掘り起こすことに一定程度成功したと認識している。
本来であればそれら多様なテーマの中の一つないし二つに重点的に時間をかけ、その主題を掘り下げていくというスタンスが望ましいと考える。しかしながら今年度に関しては、多くの新しい論点を掘り起こすことは出来たものの、それぞれの論点を一貫した形で展開していくという進め方は充分できなかった。この点は来年度改善したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
私の本来の専門である日本中世の歴史文学研究と、当該科研のテーマである帝国日本の歴史的言説の問題系を結び付け、2019年の現時点における日本国民の歴史意識の在り方をも踏まえる形で、歴史文学を中心とする一定の文学史的・言説的パースペクティヴを提出できるような論文・発表を積み重ねたいと考えている。
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Research Products
(7 results)