2018 Fiscal Year Research-status Report
タイ・〈仏印〉を描いた日本の〈戦後文学〉に関する分析研究
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18K00319
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
久保田 裕子 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30262356)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化表象 / タイ / 仏印 / 国際研究者交流 / 三島由紀夫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は研究期間を通じて、太平洋戦争前後の時期を対象として、タイに加え、太平洋戦争期まで〈仏印〉と呼称されたインドシナ半島地域のベトナム・ラオス・カンボジアをめぐる文化表象について、小説・評論・旅行記・ルポルタージュなどのさまざまな日本語テキストに描かれた表象がどのように構築され、流通したかという問題について考察を行い、〈戦後文学〉の国際的側面を明らかにすることを目的としている。平成30年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 1、日本で刊行されたタイ・〈仏印〉に関する図書・雑誌などの日本語資料の調査・収集と分析を行った。主に太平洋戦争期の〈大東亜共栄圏〉時代、1960年代以後の高度経済成長期、1980年代以降のツーリズムの時代から現在までの〈戦後文学〉を対象とした。本研究の方法は、小説などの文字テキストに加え、映画・演劇などの視覚表象について資料を収集し、新聞・雑誌記事などの日本語の同時代言説と関連させて分析した。 2、タイにおける現地調査を行い、タイで刊行された図書・雑誌などの日本語資料の調査集を行い、日本文学テキストと日本・タイで刊行された日本語の同時代言説の資料を照合・分析を行った。 3、1・2の調査・研究を踏まえ、2018年度中の活動の成果として、国際学会発表1件、国内研究会発表1件を行った。さらに今年度の研究成果として、論文1件(2019年刊行予定)、共著書1件(2019年6月刊行予定)を公表する予定である。 4、日本・タイにおいて国際的な学術的調査・研究協力の一環として、ナムティップ・メータセート(チュラーロンコーン大学文学部東洋言語学科日本語講座准教授)、タナポーン・トリラッサクルチャイ(チェンマイ大学人文学部講師)と研究についての国際研究者交流を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、当初の計画を踏まえて、以下の研究を遂行した。 1、タイ・〈仏印〉に関連するテキストの調査・収集を国会図書館や日本国内の大学図書館等で実施した。主に日本文学テキストを調査・収集と分析、表象分析の基盤となる資料収集作業を行い、当初の研究計画を予定通り遂行することができた。 2、当初の研究計画で予定していた内容に加え、2019年に予定していたタイにおける資料調査を行い、国際学会で発表した。学会発表「アンコールの彫像―三島由紀夫『癩王のテラス』―」(タイ国日本研究国際シンポジウム2018 文学3、2018年8月25日、チュラーロンコーン大学文学部)を行い、国際的学術文化交流に貢献した。また研究会発表「歴史的言説のアダプテーション―三島由紀夫『癩王のテラス』」(「第2回「三島由紀夫とアダプテーション研究会」2018年9月8日、日本大学文理学部)において、研究成果発表を行った。 3、論文「 三島由紀夫『春の雪』におけるシャム王室と留学制度」(『三島由紀夫研究』2019年刊行予定)、「原田康子、解題、略年譜、参考文献」(『新編女性作家全集』第9巻、2019年6月刊行予定、六花出版)を成果発表とした。特に三島由紀夫研究において、テキストをアジアから見る外部の視点を導入することで、新たな視点から日本の〈戦後文学〉を見直すこと可能性につながり、異文化表象をめぐる新たな文学史的な問題提起に貢献できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度における研究推進方策としては、以下の点を計画している。 1、日本で刊行されたタイ・〈仏印〉に関する図書・雑誌などの日本語資料の調査・収集と分析を行う。 2、調査・収集した日本文学テキストと日本・タイで刊行された日本語の同時代言説の資料を照合・分析を行う。 3、日本文学研究における国際研究者交流の一環として、三島由紀夫を中心とした日本文学の翻訳の問題について調査・研究を行う。 4、太平洋戦争後の〈戦後文学〉の作品として、高見順、堀田善衛など、太平洋戦争の戦中・戦後にアジア地域を訪れた作家の旅行記について考察する。また戦後に当地を訪れた三島由紀夫(タイ・ラオス・カンボジア)、松本清張(タイ・ベトナム・ラオス)、村上春樹(ラオス)などが作品を残しているが、特に三島とアジアについての問題を考察し、新たな視点から日本の〈戦後文学〉を見直すことで、異文化表象をめぐる新たな文学史的な問題考察したい。歴史・文化交流を背景とした作品について考察し、戦中・戦後をはさんで、テキストの中のアジアのイメージの構築と流布の経緯について考察する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)2018年度の研究計画に従い、研究を遂行したが、その過程で生じた予算執行金額は、図書費などがやや少なかったためである。計画的な資料購入のために、来年に有効に活用することにした。 (使用計画)2019年度は、前年度の余剰があった金額について、当初の執行予定金額に図書購入を加えた費用に充てる予定である。図書費については、執行予定金額が増加することによって、本研究の遂行にあたって、まとまった図書を購入することが可能になり、予算を有効に活用することができる。
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Research Products
(3 results)