2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00322
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西田 正宏 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (00305608)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古今和歌集 / 注釈書 / 古今伝受 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度と同様、大阪府立大学図書館蔵の古今伝受関連資料の奥書を翻刻し、その内容についての詳細な解題を作成するため、個別の資料の考察を中心に行った。特に2019年度来、奥書に記される人物についての検討を重ねている。いわゆる「地下一流」と称される伝受奥書から、さらに末流への伝来については、日下幸男『近世古今伝授史の研究 地下篇』の索引を駆使し、また奥書が多く引用される本文も参照しながら、どのような系譜に個別の伝授書が位置づくのかを検証した。が、満足できる成果が得られなかったため、予定していた雑誌(『百舌鳥国文』)への掲載はかなわなかった。さらに継続して考証を続けることにしたい。またこのような検証には、他の機関の所属する類似の伝授書への目配りが欠かせない。そのためにもより多くの伝授書を調査する必要があり、特に、国文学研究資料館など東京方面への調査を予定していたが、コロナ禍のため、それは今後への持ち越しとなった。 そのような状況の中で、手持ちの資料で研究を進めた。特に大阪府立中之島図書館に蔵せられている『宗祇略抄』については、大阪府立大学図書館蔵の古今伝受関連資料とも関係の深い地下一流のものが関わったと思われる古今集注釈書群のひとつで、従来は、その外題から、当然ながら「宗祇」に関わる一連の注釈書のひとつと目されてたが、注釈内容を詳細に検討していくと、宗祇に学びつつも、最終的にはやはり地下のものが直接に関与し、注釈を完成させた形跡が見受けられる。まだ検討の途中であるが、予定していたことができなかった中での今年度の成果の一つとして、報告しておきたい。 なお、小澤蘆庵『古今注解』の検討、特に他の注釈書との比較については、昨年度よりは順調に進めることができたが、公表までには、今しばらく時間がかかる。また他の伝本については、古書店の目録の調査も含め、引き続き気を付けておきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、当初より、雑誌に奥書集成とその解題を掲載することを目標に、その点を中心に進めてきた。大阪府立大学図書館蔵古今伝受関連資料については、奥書の人物の考証を除いては、昨年度の段階を一歩進めることができたが、本格的に人物考証をするためには、他の文献との比較・検討が必須であり、それが十分にできなかったため、予定していた雑誌への掲載も見送らざるを得なかった。十分な調査ができなかったからである。 新しい注釈書の検討など、できることをできる範囲で行うよう努めたが、本年度の目標であった奥書の集成、考察が完成していないということを鑑みれば、研究が順調に進展したとは言い難いと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、2020年度の遅れを取り戻すために、関連する伝授書の調査を行う必要がある。実地での調査を予定していたが、コロナ禍の状況が続き、移動が難しいということであれば、国文学研究資料館などのデータベースを利用することも考えなければならない。 2021年度は最終年度でもあるので、全体のまとめを行わねばならない。この科研費獲得以後、継続して行ってきた小澤蘆庵『古今注解』についての考察結果をまとめたい。 加えて奥書集成、解題も公表・公刊したいと考えている。課題として残してきた『諸家/口伝 古今和歌集秘説』と他の切紙類との比較検討も進める予定である。また今後の研究を見据えて、一条兼良に関わる古今伝受資料の基礎的な研究を積み重ねておきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は、他の機関に所蔵される伝授書の調査を予定していたが、コロナ禍で、それがかなわず、予定していた調査旅費がすべて残ってしまった。次年度使用が生じた理由はすべてこのことによる。 7にも記したように、調査がかなうのであれば、これらは調査費に充てたいと考えているが、コロナ禍により、その点は、未確定である。実地調査に行けない場合は、紙焼き資料代やそれらを取り寄せるための費用に充てたい。また関連書籍(和書)の購入も予定している。
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