2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00323
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
鈴木 元 熊本県立大学, 文学部, 教授 (40305834)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 加島英国 / 臼杵藩 / 陰陽師 / 俳諧 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、加島家資料のうち、主に文書資料の調査、データ収集、撮影を行い、前年度調査分とあわせ、ひとまず一通りの確認を終えることができた。前年度の典籍調査に続け、文書の調査をすることにより、同家資料の中心をなす加島英国の事績がかなり明瞭に浮かび上がった。当初、幕末に陰陽師を勤めていた人物とのことで、陰陽師の文筆活動が、資料調査から析出できるのではないかと考えていたのだが、その見通しは大きく軌道修正の必要があることが、当該年度の文書調査から明らかとなった。 即ち、同家旧蔵資料に含まれる、紀行や俳諧等の様々な事績は、陰陽師としての余技ということではなく、陰陽師という職そのものが、晩年に兼ねた余技の一つに過ぎないという事実が判明した。おそらく、和歌、俳諧、絵画、卜占といった多方面にわたる器用な才能により、重宝されながら臼杵藩に仕えた人物、と捉えるべきもののようである。 そして、同家資料の調査を通じて、当該年度に明らかとなったのは、資料の伝存状況にかかわる幾つかの問題である。加島家資料は、現在臼杵市の所有となり臼杵市文化財管理センター保管となっているが、それ以前には財団法人臼杵図書館、またその後身である臼杵市立図書館において、複数回にわたって寄贈をうけ、現在に至っている。ところが、図書館保管の時期に、他家寄贈資料との厳密な区別を設けなかっただけではなく、大分県史編纂の際には、家ごとの括りから外されて分類整理し直された事実も判明した。おそらくは、当時にあってはどの資料がどの家のものという区別が経験的に判別できていたのであろうが、体系的整理をしないまま、仮目録を作成するのみで終わってしまったようである。故に本研究は、加島家資料の再認定の重要な機会となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年の研究計画の2年目を終えたところで、典籍、文書、器物の基本的調査を終え、典籍についてはおおよそデータ化を完了した。また、加島家資料のうちの一点である『長崎道中記』は、借用していた踏み絵返却のために臼杵から長崎をめざす道中日記で、幕末近くの九州の地理、風俗の興味深い資料として価値が認められる。その翻刻作業として、第一稿を主に研究協力者である德岡涼氏の尽力により仕上げることができた。幾つか不審箇所については、同じく研究協力者である山田尚子氏、湯谷祐三氏の知見を借りながら、翻刻の精度を上げていく予定である。 また、「実績の概要」に記したように、加島家資料にだけに限らず、臼杵市の図書館で保管されていた資料の中には、伝来過程でいろいろな問題を抱えていることが判明した。そこで、加島家資料に焦点をあて、文化財課の方々の協力を得ながら、伝来課程の問題をある程度整理することができた。その内容は、目録とあわせて公表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
加島家資料をめぐる中心人物は、加島英国という人物であるが、本年度の文書調査により、その人となりがかなり明瞭になってきた。また、地方俳壇の実態を示す興味深い資料も出てきたことから、加島家資料を用いてのさらなる研究を進める必要がある。 ただし、研究推進の最大の課題は、新型コロナウイルスの感染拡大により、資料調査の予定が現時点においては、非常に組みにくいというところにある。本研究の到達点の一つは、加島家資料の目録を作成し、臼杵藩の藩政史料の中核をなす稲葉家資料と相補う関係にある加島家資料の価値の再定義をめざすものであったが、しばらく目録作成のために必要な、資料の再点検が停滞せざるを得ない。本年度は、採取したカードをもとに、研究協力者とともに資料の全点確認を行い、資料の内容を踏まえた分類にあたる予定であったため、影響は大きい。 感染症の収束を待つ間は、昨年度の調査の際に収集した撮影資料を用いながら、加島家資料個々の資料価値を探る作業を進めることとする。これまでは調査に力点をおいた2年であったので、今年度は調査再開の目途がつくまで、資料の翻刻や内容分析に力点をおいた取り組みとする予定である。この方針に基づいて、研究協力者にも同様に依頼をする予定である。
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Causes of Carryover |
旅費の計算に時間がかかり、執行確定額の確認が遅れたため。未執行分については、本年度に執行予定。
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Remarks |
上記webページにより、2019年度は「菊池風土記巻三註釈」を公表。
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Research Products
(7 results)