2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study on "Literature" as a Cultural Resource in the 1950s-1970s
Project/Area Number |
18K00330
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山岸 郁子 日本大学, 経済学部, 教授 (90256785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
十重田 裕一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40237053)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 文学館 / 文化資源 / 文学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19(新型コロナウィルス感染症)はデジタルアーカイブの重要性を再認識する契機になった。たとえば山口県立山口図書館では「国立国会デジタルコレクション」と「青空文庫」のデータを結びつけ、県ゆかりの文学者の資料をまとめている。多様なプラットフォームを横断できる仕組みを作り、研究者や市民と協働で情報を蓄積できる場所として文学館が存在するという可能性をひらいている。文学館の多くは新型コロナウィルス感染拡大防止のため一時閉館や企画の変更を強いられる中で、さまざまな情報をSNSで発信していた。菊池寛記念館(高松市)では「マスク」というスペイン風邪の予防につとめる菊池寛の作品を前面に出した「菊池寛とマスク」という展示を急遽企画し、「おうちで学ぶ菊池寛」として「マスク」全文をHP上で公開した。泉鏡花記念館では極度の潔癖症であった鏡花を想起させるオリジナルマスクを販売した。収入チャネルとして文脈のあるオリジナルグッズの製作に定評のある記念館であったからこその瞬発力が発揮された。また徳田秋聲記念館はブログ「寸々語」において実証的史実や資料に基づきながらパンデミックの最中だからこその魅力的な情報を発信した。またこの間「文豪」ブームが起こり、2.5次元ミュージカルのオンライン配信によりアナログとデジタルとの行き来のできる「個」の力が現在文学という「資源」を護っていくための重要な鍵となっている。その代表コンテンツである「文豪とアルケミスト」にに登場する文豪の作品は著作権が切れており、「青空文庫」では「推し」の作品を入力するボランティアが増加し、ゲームに登場する作家の作品がデータをして蓄積している。「個」の力がデジタルアーカイブの一片を作り上げ、「資源」に社会性、公共性をもたせるための力になっている。つまり一人ひとりが価値を見出しやすい環境が作られもしたのである。
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