2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00332
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
水谷 隆之 立教大学, 文学部, 教授 (60454500)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近世文学 / 俳諧 / 浮世草子 / 西鶴 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目にあたる今年度は、前年度に引き続き、西鶴とその周辺の作者の俳諧および浮世草子に関する基礎的研究を進めた。 今年度は、西鶴の特に元禄期の作品における連句の付合の特徴や、雑俳書への西鶴の批点の特徴について、句の解釈を行いつつ精査・分析し、当時の俳諧師との関係をも見据えながら調査を進めた。また、西鶴以後の浮世草子としては、『寛濶平家物語』の注釈・分析を継続して行った。いずれも今年度の成果発表には至らなかったが、近々論文として公表する予定で準備を進めている。 その他、近世のとくに中期までの俗文芸を例にとり、当時の日本人の海外への漂流の史実と庶民文芸とがどのような関係を持ち、あるいは持たなかったのか、またその中で日本人の異国へのイメージがどのように形成され、表現されたのかを追い、「漂流と漂着」と題する論文を執筆した。近世の漂流記録は写本として流通したが、それは鎖国下において出版が規制されたためである。それらを取り入れた文芸作品における異国への漂流は、既存の古典に置き換えたり、架空の国として設定したり、教訓を述べつつ登場人物の言動を滑稽に描くなど、近世の俗文芸が多く採った一定の「型」のもとに描かれた。その見解のもと、本研究課題に関しては、『本朝二十不孝』(西鶴作、1686年刊)、『世間母親容気』(多田南嶺作、1752年刊)などの浮世草子と漂流記の関係を新たに示した(『東アジア文化講座1 東アジアの文学と異文化交流』文学通信、2020年刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度末に複数の機関にて資料調査を行う予定であったが、各機関の閉鎖によりそれがかなわず、資料収集ならびに研究成果の公表に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集の遅れを取り戻したうえで、本研究課題の研究計画にしたがって研究を進める。
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Causes of Carryover |
資料収集のための国内旅費としての使用を計画していたが、COVID-19の影響により年度末に諸機関が閉鎖されたため、これを翌年度以降に延期した。
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