2019 Fiscal Year Research-status Report
大阪能楽会館蔵書解題目録の作成ならびに茂山千五郎家と青家のかかわり
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18K00339
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
関屋 俊彦 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (70125136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大西閑雪 / 関寺小町 / 豊崎宮 / 謡曲十五徳 / 國諷 / 北岸佑吉 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年2月15日に関西大学東西学術研究所で「能楽師大西家年譜考証」と題して講演という形で中間報告が出来た。大西家七代信久氏『初舞台七十年』(昭和54年・大西松諷社)の記述を確認しながら付け加えていった。孝徳帝を唯一祀っている謡曲〈豊崎宮〉は信久が戦時中俳人入江来布に作詞を依頼した習作曲であるが、来布と親しかった箕面西光寺名誉住職吉田叡隆氏と来布研究者角野京子氏もお見えであった。同曲については「大西家所蔵番外曲〈豊崎宮〉等について」(『東西学術研究所紀要』52輯で紹介しているが、友田昇宮司から復曲を望まれてもいる。『東西学術研究所研究叢書』9号に「大西閑雪筆『謡曲十五徳』」と題して書いたことでもあるが、史料は一心に求める者のところに入ってくるものだというが、何気なく見ていた古書目録で実現したのである。更に「大西閑雪と〈関寺小町〉を著すことも出来た。最初の赴任校である武庫川女子大から初めて依頼されたものであり、大曲を取り上げた。閑雪は二度にわたって演じている。大西家の服部慰安斎筆の美麗な巻子本を翻刻したが、何より『國諷』という明治期大阪で唯一発行された能楽専門誌であるが稀覯本になっている。法政大学能楽研究所で関連個所のみ拝見したが、実は国会図書館にバックナンバーがあることが判明した。同雑誌は閑雪が深く関与していると思われるが、確認のため上京するにはコロナ騒動が落ち着くのを待つばかりである。大西智久氏は吉井基晴氏と「松華会」を結成され、2020年4月18日に第一回目が開かれる予定であったが、これも延期せざるを得なくなってしまった。なお、元朝日新聞記者の北岸佑吉氏が撮影された写真・ネガを入手し、大阪能楽会館の舞台写真等貴重な写真も整理中である。智久氏からお預かりしている資料も書誌記録はどうやら先が見えてきた。いずれにしても大西家は大きな存在であったことが判明しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大西家文書解題目録作成という当初の目的は、ほぼ完成に近づきつつあるが、目録を完全なものにするため大西家に返却している文書の再確認が必要となってくるであろう。重要なものは撮影をすることをお願いしている。保存も中性紙箱に入れるなどの方策を考えなければなるまい。大阪能楽会館が解体される前に内部の撮影をプロカメラマンの今駒清則氏に依頼して撮影してもらっているが、なんらかの形にしなくてはなるまい。また、『國諷』には閑雪自らが大西家に明治後期所蔵されていた文書については簡略ながら解説が記されていることがわかっているので、法政大学能楽研究所および国会図書館での確認が是非とも必要とされる。幸い観世家文書の報告書は近々刊行されるようなので比較は容易になりそうであるが、それでも観世家文書の実際を確かめなければならない場合も生じてくるであろう。更に観世黒雪(慰安斎)〈関寺小町〉巻子謡本の例があるように予想以上に学界で未知の資料が多い。 「やや遅れている」としたのは、コロナ騒動のため持病があるので『國諷』ひとつ取り上げても、なかなか上京の機会がつかめないでいる。基本作業を行なうための関西大学図書館での調査も実質的に6月15日から入館が可能である。また、新たに入手した北岸佑吉氏の写真類もさすが朝日新聞の記者をされただけあって大阪能楽会館以外の貴重な写真があり、整理には時間がかかりそうである。これは水門の会で報告し同会の紀要に書くつもりであるが、原稿料は別である。
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Strategy for Future Research Activity |
第二課題としての茂山家の調査については5世千作氏が2019年9月に逝去されたこともあり中断している。4世千作氏が御存命のころから親しくしてもらっていたが、同家文書は若干拝見するにとどまっている。茂山家についても触れているはずの大蔵宗家文書もせっかく25世弥右衛門氏から引き続き同家文書調査を許可されているのだが中断したままである。青家文書については青造酒之介が幕末に京都寺町在住であることまでは突き止めたが、青家文書の再度の写真撮影依頼もそのままになっている。更に周知のように大阪能楽会館は閉館してしまった。従って、本年度の最終報告の標題は「能楽師大西家所蔵解題目録の作成」と改めることになるであろう。進捗状況であるが解題目録作成そのものについては165,490字入力に達し、ほぼ完成している。
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Causes of Carryover |
やはりコロナウィルス騒動の影響は大きい。特に『國諷』の再調査のために新年に入って法政大学能楽研究所や国会図書館を訪問する予定だったが、外出規制が次第に拡大したため中止せざるを得なかった。『國諷』は法政大学能楽研究所鴻山文庫本には67冊あるが欠号も目立つ。国会図書館がバックナンバーを揃えているようなので確認するため調査に赴きたい。第2号で「大阪時事新報」を引いているように当時「大阪に於ける能楽界唯一の雑誌」であり、大西閑雪が蔵書についての解題も連載している。恐らく閑雪が中心になっているものと思えるので全て点検したいが原本はかなり劣化が進んでいる。手元に置いて確認するためには業者に撮影依頼するなりの方策を考えなければならないかと考えている。元朝日新聞記者の撮影された北岸佑吉旧蔵の写真は整理して水門の会の学術誌に報告する予定だが、執筆料も要ると聞いている。また、最終年度は報告書を作成したりする総括の年度のため撮りためた写真資料の整理や確認のための旅費等のために予算は充分残しておきたい気持ちもあった。間接費用としては多年ワープロに保存してきたフロッピーがあるのだが、ワープロそのものがまったく故障してしまったため、中古品を買い求めなければならないと考えている。
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Research Products
(7 results)