2020 Fiscal Year Research-status Report
大阪能楽会館蔵書解題目録の作成ならびに茂山千五郎家と青家のかかわり
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18K00339
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
関屋 俊彦 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (70125136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 能楽師大西家 / 蔵書解題 / 大西閑雪 / 國諷 / 拾菓抄 / 豊崎宮 |
Outline of Annual Research Achievements |
能楽師「大西家は1762年(宝暦12)に姫路より大阪へ出て京観世五軒家の岩井家に学んだ新右衛門宗明を初代とし、以後同地にあって謡指南をしていた家柄」(『能楽大事典』・2012年・筑摩書房)である。京観世五軒家とは18世紀半ばころシテ方片山九郎右衛門家のもとに岩井・井上・林・浅野・薗の五家が地謡方をつとめ、江戸の観世宗家と異なった謡方で素謡教授などで生計を立てていた。大西家の拠点である能楽堂は大阪博物場・大阪能楽殿と移り、戦火に遭ったあと信久の代なって大阪能楽会館として復活し、戦後の大阪の能楽界をリードした。しかしながら平成29年に残念ながら閉館した。私は大西家八世智久氏の御好意を得て、目下、同家所蔵の蔵書解題目録を作成中である。すなわち2017年12月までは梅田にあった会館に毎週伺い蔵書を借り受け、一点一点を点検の上、解題を作成、翌週、交換するという作業を繰り返していた。2018年に入ってからは、残りの蔵書を借り受けて、当初は法政大学能楽研究所など資料調査に出掛けることもできたが、コロナ流行後は自宅とせいぜい関大図書館等での往復という形で作業を進めている。その間、随時、番外謡曲を手始めとして『なにわ大阪研究センター紀要』や『東西学術研究所紀要』等に報告している。顕著な成果としては『拾菓集』とう早歌(宴曲)の本が見つかったことである。室町時代の写本で岡田三津子氏と共著でインターネット公開した。又、高野山増福院の大西閑雪供養碑の確認や孝徳帝を唯一祀っている豊崎宮を素材としている俳人入江来布作詞・大西信久作曲の新曲〈豊崎宮〉の発見は他方面に新たな展開を見せている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響は大きかった。個人的なことだが入院も余儀なくされた期間もあった。後期高齢者で持病持ちなので、主治医から感染にはくれぐれも注意をするように告げられている。しばしば非常事態宣言が出されているので自重せざるを得なかった。愛用していたパソコンが突如フリーズするという想定外の事態も生じている。 結局、大西閑雪がかかわっていると思える『國諷』所蔵の法政大学能楽研究所調査等も延期せざるを得なかった。従って出張調査はほとんど関大図書館である。大阪能楽会館の演能記録にもなっている写真を入手し、最後の刊行になった『大阪春秋』180号には略記したが、より詳細な記録「北岸佑吉旧蔵写真等について」(『水門ー言葉と歴史ー』も入稿済みだが発行は大幅に遅れるようだし、恒例になった篠山能パンフレットの監修も原稿は揃ったが、結局、中止となった。
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Strategy for Future Research Activity |
巣籠りになった分、大西家蔵書解題目録はほぼ完成しA4で200頁を超えている。最終的には本にすることが大西家に対しても礼節を全う出来ると考えている。いきなり出版するのは心もとなかったが、東西研70周年記念論文集が2021年10月締切で文字数も2万字認められていることがわかった。整理し直したものを応募する予定である。更に終活に向けて大量に溜め込んだ蔵書・書類の整理を進めている中で新たな発見もあった。今回の課題とは直接関係がないので記さないが、生涯研究者になった我が身は、むしろ幸せと思っている。科研費の一年延長も認めてもらえたので見直しを含めて、今後、専念出来る。また、2021年1月16日に西宮能楽研究会から西宮市フレンテホールでの「能「西宮」を謡おう!」の講演を依頼されたことはうれしかった。武庫川女子大につとめていた時、能楽師の故吉井順一氏から熱心に誘われ、復元の協力をしたことがある。再演に向けての協力は惜しまない。智久氏は2019年3月31日に大西家・吉井家の結束を願われ、自ら率先され〈翁〉を見事に演じきられた。大阪で最も由緒ある家柄である大西家の能楽堂再建へ向けて、私も間接的ながらお手伝いしたい所存である。なお、課題には狂言師茂山家と青家のかかわりを併記していた。文化文政のころ禁裏の鏡司であった青造酒之輔が茂山久蔵英政のことで、事実、箕面市の青敬祐家に文書が伝わっていることを明らかにした上でのことで見通しを立てた訳である。残念ながら大西家文書の調査が手一杯で、こちらは先延ばしにせざるを得ないことを断っておきたい。
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Causes of Carryover |
何よりも『國諷』所蔵の法政大学能楽研究所調査が優先される。コロナ禍で中断していた東京に行ける2回分くらいの予算が残っている。同書の数冊は近場でいえば京都女子大が所蔵されていることがわかっている。又、観世宗家には大西家関連のものが伝わっていたであろうことは充分に予測出来ていたのだが、ごく最近(2021年1月30日)になって『観世文庫所蔵能楽資料解題目録』(檜書店)が出版された。これでかなり史料を拾える。本来ならば目録だけでは判明しない点も確認したいところだが、予算的には難しいであろう。フリーズしてしまったパソコンは、あらかじめ購入していたパソコンに順次入れ替えていくが、それにかかわる費用もいくばくかがかかるであろ。
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Research Products
(2 results)