2021 Fiscal Year Research-status Report
大阪能楽会館蔵書解題目録の作成ならびに茂山千五郎家と青家のかかわり
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18K00339
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
関屋 俊彦 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (70125136)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 能楽師大西家 / 大阪能楽会館 / 大西閑雪 / 蔵書解題 |
Outline of Annual Research Achievements |
『関西大学東西学術研究所創立七〇周年記念論文集』(2022年3月)に「能楽師大西家蔵近世以前写本版本目録」を掲載した。本にする前提となるものである。写本系・版本系・伝書系に大別したが、新発見となる『拾菓抄』や巻子本『関寺小町』、〈翁〉は別扱いにした。岩井家七世新発が文久二年に没して無住となり、大西寸松が名代となったことをきっけに岩井家蔵書が混じって入っている。謡本は一番綴から五十番綴まで年代順に並べた。特に一番綴写本には未紹介の曲も入っている。 『水門 言葉と歴史』に「北岸祐吉旧蔵能楽写真リストー「関西の戦後二十年」を中心にー」(2021年11月、水門の会編、勉誠出版)がようやく出版された。朝日新聞記者という特権を活かされて撮影された珍しい写真である。狙い通り、大阪能楽会館の演能も含まれていた。ネガフィルムは劣化して異臭を放っているが、保存方法はプロ写真家の今駒清則氏の御教示を得た。 「復曲能「西宮」再挑戦」を『武庫川国文』91号(武庫川女子大学国文学会、2021年8月)に報告することが出来た。廣田神社で行われた講演会(能「西宮」を謡おう!実行委員会主催)のレジュメとして使えた。同実行委員会『能 西宮~「西宮」のおはなし」』(2022年1月1日)は西宮市が協力した絵本であったが、私も協力者とし参加したことはうれしい初体験であった。せっかくの機会なので廉価版にされることをお勧めしたい。 「狂言〈犬山伏〉をめぐって」を『紫明』49号(紫明の会、2021年10月)に書いた。4月10日に行われた『第四十七回篠山春日能』のパンフレット監修とあらすじを恒例になったが執筆した。そのほか『ノスタルジック関西』(2022年6月、明治安田生命関西を考える会)にエッセイ、研究発表として「海老名南阿弥菩提寺の行方」(2021年12月26日、六麓会)をオンラインで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響は大きかった。大西閑雪がかかわっていると思える『國諷』所蔵の法政大学能楽研究所調査等も延期せざるを得なかった。従って出張調査はほとんど関大図書館である。個人的なことだが入院も余儀なくされた期間もあった。ただ、巣籠りになった分、大西家蔵書解題目録はほぼ完成しA4で200頁を超え、大西智久氏の御厚意で、お借りしていた書籍は一点ずつ解題を付して全て返却できている。更に終活に向けて大量に溜め込んだ蔵書・書類の整理を進めている中で新たな発見もあった。生涯研究者になった我が身は、むしろ幸せである。更に科研費の再延長も認めてもらえたので見直しを含めて今後、専念出来る。たとえば観世宗家には大西家関連のものが伝わっていたであろうことは充分に予測出来ていたのだが、2021年1月になって『観世文庫所蔵能楽資料解題目録』(檜書店)が出版された。これでかなり史料を拾える。大谷節子氏編著『謡の家の軌跡 浅野太左衛門家基礎資料集成』(2022年3月・和泉書院)も参考になる。また、西宮能楽研究会から「能「西宮」を謡おう!」の講演を依頼されたことはうれしかった。武庫川女子大につとめていた時、能楽師の故吉井順一氏から熱心に誘われ、復元の協力をしたことがある。主要メンバーの一人である子息基晴氏は大西智久氏と松華会を受け継がれているという御縁もある。再演に向けての協力は惜しまない。「北岸佑吉旧蔵写真等について」(『水門』)もようやく発行された。
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Strategy for Future Research Activity |
大西家所蔵解題目録作成については近世以前の写本版本に限って関大東西研記念論文集にとりあえず書名を挙げるにとどめて報告してみた。しかし、曲名の読み方等不徹底が我ながら目に立つ。目録のデータは全て入力済みだが、細かいところを含めて大西家を煩わせることになるが、保存方法をも含め相談に伺いたい。気になっているのは、やはり法政大学能楽研究所の『國諷』全巻閲覧である。コロナ禍には充分配慮して近辺である京都女子大学や大阪大学にも数冊保存されているので調査に赴く。報告書とは別にきちんとした本にしたいので別途応募するつもりである。大阪能楽会館は閉館になったので、能楽師大西家所蔵と改題することとなる。中断している大蔵家と青家の文書調査の再開にも目途を立てたい。
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Causes of Carryover |
やはりコロナ禍が大きかった。大西閑雪にかかわって法政大学能楽研究所蔵の『國諷』残りの閲覧等、課題はわかっていたのだが、持病もあり、出掛けることには慎重にならざるを得なかった。今年に入り緩和されたので何度か出張出来るはずである。近世以前の簡略な目録は公にしたが、やはりきちんとした本にすることが待たせてしまった大西家への恩返しでもある。その準備にかかりたい。原稿を見直している最中だが、寸法等抜けている箇所も見付かった。御自宅の書棚での保管の問題(中性紙箱に入れるか)もあり、何度か再調査に赴かなければなるまい。更に、はからずも大西家に派生して豊崎宮や能〈西宮〉にかかわって廣田神社・西宮神社の文書調査という課題にも広がった。副題としての茂山家本姓青家の鏡文書も伺うとそのままだそうであり、大蔵弥右衛門氏の御厚意も中断したままである。それらを含めて出張費に使うことが多いであろう。なすべきことは多い。
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Research Products
(4 results)