2018 Fiscal Year Research-status Report
Philological Study on Takimono Culture Towards Comprehensive Recognition and Revitalization of Takimono Culture
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18K00340
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Research Institution | Hiroshima Jogakuin University |
Principal Investigator |
田中 圭子 広島女学院大学, 総合研究所, 研究員 (20435051)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薫物 / 香 / 日本伝統文化 / 文献学的研究 / 陽明文庫 / 武雄市歴史資料館 / 近衛家 / 武雄鍋島家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度には、3名の研究協力者(志學館大学専任講師・日高愛子氏、帝京大学短期大学専任講師・中村健太郎氏、広島県立歴史博物館主任学芸員・石橋健太郎氏)とともに2度にわたり公益財団法人陽明文庫での古文書古典籍閲覧調査会を実施して、同文庫に収蔵される近衛家伝来の香・薫物関係の貴重書の閲覧及び資料収集調査を行った他、研究代表者が単独で武雄市歴史資料館を訪問して、武雄鍋島家伝来の香・薫物関係の貴重書の閲覧及び資料収集調査を行った。閲覧した資料の一部については翻刻稿を執筆中である他、書中に記載される室町時代から江戸時代までの人物についての調査研究も行い、これらの人物の「合香家」としての新たな業績の発掘と検証に取り組んでいる。 執筆活動と並行して、学術大会における口頭発表、大学及び地方自治体が市民を対象に無償で開催するワークショップへの出講も行い、研究成果の社会への還元と市民との対話の実現に努力した。これらのワークショップでは、薫物文化の歴史と実相について、秘伝書や王朝物語作品等の記述をもとに解説を行った後、実際の処方に基づく調香作業を実施する等して、薫物文化を体験的に理解、習熟いただけるよう努力した。なお、2018年度に実施したワークショップでは、薫香の専門企業(鳩居堂)の協力を得て、信頼できる品質の香料を使用することができた。 研究の進捗状況は予想以上に順調であることから、2019年度には、当初計画で最終年度に予定していた国内での資料収集調査及び国際研究集会での成果報告を、前倒しして実施するべく準備を進めている。これに伴い、研究協力者との連携強化を図る必要から、研究協力者3名の内2名(日高氏及び中村氏)については、2019年度より役割を研究分担者に変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主たる閲覧調査先である公益財団法人陽明文庫の理解と研究協力者3名の協力を得て、計画当初は3年を要するものと予測していた閲覧調査期間を、1年に短縮して完了することができた。 本研究の波及効果として、計画当初に予定しなかったアウトリーチ活動への、2019年度以降の参加についても決定している。岩手県西磐井郡平泉町では、2021年6月に世界遺産登録10周年を迎えるのを前に「平泉のかをり創造プロジェクト」が発足して、古代の薫物の処方などをもとに、地域の新たな土産品として〈平泉のかをり〉の開発に取り組むことが計画されている。プロジェクトの参加者は地域住民を始めとする有志である。プロジェクトでは、参加者が平安時代の類纂と伝わる文献に記載された薫物の処方などを読み解きながら、奥州藤原氏の繁栄した当時の平泉において調合、賞玩されたであろう薫物についての、基礎的な知識及び調合技能を習得できるような催しの実施も計画中である。 研究代表者はこのプロジェクトに参加して、必要な情報提供等を行う予定である。これにより、本研究の将来的な波及効果として期待している〈薫物文化の復興〉、すなわち、近代以降に衰退した薫物文化が、身近な教養や嗜好として再び普及し、多くの人々が手軽に、かつ持続的に享受できるような社会の実現に向けて、着実な一歩を踏み出すことができたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では研究期間の最終年次に予定していた国際研究集会での研究成果報告を、研究期間の2年次にあたる2019年度中に実施する計画に改め、研究分担者2名及び研究協力者2名(内1名は海外在住)との発表パネルを編成し、2019年3月に応募を完了した。採択された場合には、2019年11月中に国際研究集会でのパネル形式による研究成果報告を実施する計画である。 上記の応募が残念ながら不採択となった場合には、研究期間の3年次にあたる2020年度中の計画として予定している国内の某家に伝来する薫物・香関係の古文書古典籍の閲覧調査を前倒しして、2020年2月中に実施したい考えである。 岩手県を拠点とした「平泉のかをり創造プロジェクト」にも引き続き参加して、2021年度中の完成と発売に向けた協力を行う予定である。 なお、2018年度中の調査研究成果については、近日中に論文化し、2019年10月発行予定の雑誌に掲載して公開する他、同時期に開催予定の市民向け公開講座等において、講演又は展示の形式により公開する計画である。
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Research Products
(9 results)