2023 Fiscal Year Annual Research Report
Representation of Isram in Modern and Contemporary Japan literature
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18K00341
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Research Institution | Saga Women's Junior College |
Principal Investigator |
浦田 義和 佐賀女子短期大学, その他部局等, 客員教授 (00151944)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マレーシア / インドネシア / ジャワ / シンガポール / 武田麟太郎 / 寺崎浩 / 井伏鱒二 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、特に残されていた課題の、日本近代・現代文学作品に表象されたアジアのイスラーム社会を重点的に研究した。 まず、本年度は最終年度であるため、これまで収集した情報や資料の整理を中心にした。 前年度に調査したマレーシアに関しては、戦時中、南方徴用作家としてマレーに赴任、滞在した寺崎浩をめぐって、その赴任先であるペナン島の多民族社会の伝統を確認したうえで、戦時下の作品である「マライ人の静脈」では、マレー人イスラム教徒を他民族と比較して「やる気がない」しかし、妙な強い信仰心があると捉え、またインドネシアに赴任した同じく南方徴用作家武田麟太郎「ジャワ更紗」では、イスラム教への一定の理解を示し、西洋キリスト教社会の偏見に異和を唱え、必ずしも畜妾主義ではないと、イスラム擁護の視点を提出した。一方シンガポールに赴任した井伏鱒二は「花の街」で、作者の評価は控え、多民族社会における弱い立場のアジアのイスラム教徒の状況が描かれていると分析した。 研究期間を通じて、イスラムが表彰された近代文学は、千夜一夜物語を別にして、紀行文に多く見られるように、異文化への表層的な興味や古代文明への関心の底辺に西欧との対抗的なアジア主義思想に彩られた作品が多く、それはいささか抽象的な印象に過ぎなかったが、昭和期にはいり、南方徴用作家としてアジアのイスラム社会に具体的に干渉するにつれ、次第にイスラムの特徴をとらえようとする姿勢が醸成されてきたとまとめられる。
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Research Products
(1 results)