2023 Fiscal Year Annual Research Report
The Intersection of Resistance and Collaboration of Chinese Intellectuals in the Japanese Occupied Territories: With a Focus on the Female Writer Mei Niang
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18K00346
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
羽田 朝子 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (90581306)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 梅娘 / 「蟹」 / 『華文大阪毎日』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本占領地における中国知識人の「抵抗」と「協力」が交錯する精神について検討し、とくに日本占領下の北京で活躍した女性作家・梅娘の文学に着目し、その複雑で矛盾に満ちた精神を読み解くものである。とくに梅娘の言論や文学に表出された近代性と民族主義の相克、戦前・戦後のテーマの連続性について考察する。 当該年度は、当初の予定になかったものの、梅娘の代表作である長編小説「蟹」が当時日本の国策宣伝を行っていた雑誌『華文大阪毎日』(大阪毎日新聞社・東京日日新聞社発行。以下、『華毎』)に掲載されたことに着目した。とくに「蟹」の『華毎』における意味や、そのことが梅娘の創作活動に対しどのように作用したのかについて検討し、以下のことを明らかにした。 梅娘の「蟹」掲載当時、『華毎』編集部は誌面における中国の南北文壇の融合や女性作家の創出を目指しており、梅娘「蟹」を上海のベテラン作家張資平(1893~1959)の「新紅A字」とともに連載し、さらに誌上においてこの同時連載について大々的に宣伝した。このようななか発表された「蟹」は、他の梅娘作品と比べ、満洲国の背景がより色濃く反映され、大家族の権力構造がより複雑に描き出され、同時に植民地支配への批判も果敢に表現されていた。このことから、梅娘は影響力のあるメディアで、南の大作家との同時連載という大舞台を与えられたことにより、植民地としての満洲国について描き、自己や歴史と深く向き合うことになったのだといえる。
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