2022 Fiscal Year Annual Research Report
The Development and Succession of British Farming Communities in the Transformation of Ferme Orne
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18K00372
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
今村 隆男 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90193680)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ピクチャレスク / 風景庭園 / イギリス文化 / 農業史 / 18世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍の中で予定通りに研究が進まず、当初は4年間の予定であった本研究は5年目に延期せざるをえなくなった。5年目になる令和4年度においては、これまでの研究で実行できなかった部分、すなわち、渡英によって具体的な装飾農園の現地調査や現地の図書館などでしか入手できない詳細な資料に基づいて分析を進める、という点を軸に研究を完成させる計画であった。しかしながら、感染状況が変化しない中でまたしても渡英がかなわず、現地調査を抜きにして研究計画をまとめることになった。本年度の前半で行ったのは、もっとも装飾農園らしい農園と言われるウーバーンの実態とその継承の歴史をできるだけ詳細に明らかにすることである。調査対象を周辺関連分野にまで拡大し、国内で新たに入手できる資料をできるだけかき集めることで、この農園の全体像に迫ることができたと考えている。その要点は、ウーバーンは風景庭園とは全く異なって18世紀の通常の農園あるいは農地の実際を踏まえたものであり、そこから乖離しない範囲で庭園としての理想化が行われたこと、農業革命が進行した18世紀の末からはこの理想の装飾農園にも科学に基づく最新の技術が持ちこまれることで農園として継承されていったこと、および、19世紀の半ばにはその名声を受けてそこを訪れたオルムステッドらアメリカを代表する農業指導者や造園家に大きな影響を与え、その遺産が海を隔てて引き継がれていったこと、とまとめることができる。これらの研究成果は『和歌山大学教育学部紀要』の査読論文として発表した。年度後半においては、装飾農園やHome Farmなどの継承をイギリス近代の農業史を分析することで明らかにすべく、18世紀末から19世紀前半にかけての囲い込みの状況、また農業に関わる政治や科学などについて分析し、装飾農園の農業的背景を掘り下げた。そして、これまでの研究を全て踏まえて装飾農園の意義を考察した。
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