2021 Fiscal Year Research-status Report
成長のアンチノミーとポスト帝国のイングリッシュ・スタディーズ
Project/Area Number |
18K00410
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
大田 信良 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90233139)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ポスト帝国 / イングリッシュ・スタディーズ / 福原麟太郎 / アール・デコ / 20世紀文化空間 / monolingualism批判 / Late Modernism / 消費の帝国アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
①冷戦期の米国文学・文化をグローバルに再解釈するための媒介・翻訳空間としてのポスト帝国日本における英国文学・文化については、2021年5月菊池かおり・松永典子・齋藤一・大田信良編著『アール・デコと英国モダニズム――20世紀文化空間のリ・デザイン』(小鳥遊書房)として、成果を発表・出版した。
②ポスト冷戦期の覇権あるいはマネーとパワーの移動に端を発する歴史的変動・再編のマッピングと歴史化については、大英帝国にかわる消費の帝国アメリカの勃興という歴史的コンテクストに時間のずれを孕みながら位置づけられる、Marina MacKay等のLate Modernismおよびそれ以降の研究を批判的にとらえるヴァージニア・ウルフ協会全国大会シンポジウムを企画・準備し、その後、追加メンバーとともに、論集からなる研究書・教科書を執筆・編集を進めた。
③新たなイングリッシュ・スタディーズあるいは現在の英語教育から見直す「英文学」と20世紀の英語教育については、英国ウォリック大学での現地リサーチが困難であったことから、今年度は、グローバリゼーションと現代資本主義世界の空間再編に対応するイングリッシュ・スタディーズをあらためて理論的・実践的に企図し構想・制作する作業に備えて、これまで計画・設計されその後もかたちを変えてリ・デザインされてきた「グローバル・イングリッシュ」の歴史的編制とそのいくつかの特徴・特質をスケッチしてみること、つまり、グローバルな帝国の文化という視角から、英語教育の現在をとらえる論文執筆を進めた。 また、前年度からの継続で、福原麟太郎の英語教育論を19世紀から21世紀の英国の教育と比較・解釈し、この成果は、大道千穂青山学院大学教授と共著「『あるびよんー英文化綜合誌』から再考するヘルス・ケアと(英語)教育」として『アール・デコと英国モダニズム』として出版した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 ①冷戦期の米国文学・文化をグローバルに再解釈するための媒介・翻訳空間としてのポスト帝国日本における英国文学・文化については、20世紀文化空間をポストモダニズムあるいはアール・デコと英国モダニズムの複雑な交渉・衝突・ずれを孕んだ重なり合いに焦点をあてる試みをほかの研究者と集団的なプロジェクトにおいておこない、『アール・デコと英国モダニズム――20世紀文化空間のリ・デザイン』(小鳥遊書房2021年5月)出版した。 ②ポスト冷戦期の覇権あるいはマネーとパワーの移動に端を発する歴史的変動・再編のマッピングと歴史化については、「長い1930年代」とオクスフォード英文学の研究を開始し、Marina MacKay等のLate Modernismおよびそれ以降の研究を批判的にとらえるヴァージニア・ウルフ協会全国大会シンポジウムを企画・準備し、その後、追加メンバーとともに、論集からなる研究書・教科書を執筆・編集を進めた。その成果は、論集として2022年度に発表・出版する準備が着々と進行している。 ③新たなイングリッシュ・スタディーズあるいは現在の英語教育から見直す「英文学」と20世紀の英語教育については、昨年度につづき、英国出張特にウォリック大学での調査とインタヴューが実施できなかったが、英語教育におけるmonolingualism を批判的にとらえる研究とphilologyを弁証法的にアレンジし組み替える研究プロジェクト、つまり、あらたなイングリッシュ・スタディーズの構築を、ポスト帝国日本の英語教育についての歴史的研究をふまえて、開始することができた。H・E・パーマー/語学研究所に関する調 査・研究も、このプロジェクトに組み込む見通しができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、冷戦期の米国文学・文化をグローバルに再解釈するための媒介・翻訳空間としてのポスト帝国日本における英国文学・文化については、20世紀文化空間のリ・デザインの研究を、個人の研究と併行して、日本ヴァージニア・ウルフ協会全国大会シンポジウムの集団的なものも含めさらに展開・拡張し、「長い1930年代」とオクスフォード英文学の研究を、継続し、この成果は、2022年度に新たな論集第2弾として発表・出版する。本格的に、開始する。次に、インドを含むユーラシアの歴史的・地理的空間に注目し、ポストコロニアル文学として流通・消費されたArundhati Royのテクストを、イギリス東インド会社に注目し直すことで、地政学的に、再解釈し、「20世紀文化空間のリ・デザイン」の第3弾として、研究を継続的に拡大していく。その準備として、まずは、第18回東北ロマン主義文学・文化研究会シンポジュウム(7月16日)に参加・口頭発表をおこなう。 最後に、ネオリベラリズム批判あるいはthe social turnと呼ばれる英語教育の動向をふまえながら、グローバル/トランスナショナルなphilologyの歴史化を経たイングリッシュ・スタディーズの理論の構築のために、今年度は、「グローバル・イングリッシュ」の歴史的編制に関する論考を発表・出版する。英国あるいは海外へのリサーチやインタヴューのための出張可能な状況になった場合は、英国ウォリック大学のDr Richard Smith (Reader in English Language Teaching & Applied Linguistics )や Peter Brown氏とコンタクトへのインタヴューを含むリサーチをおこなうが、それが困難な場合は、オンラインによるミーティングまたは研究文献の批判的解釈等々、探りたい。
|
Causes of Carryover |
今年度も、英国出張特にウォリック大学での調査とインタヴューを計画していたが、コロナ菌拡大による海外渡航の困難によって、海外渡航にかかわる出張・リサーチ等が実施できなかったため、英国と日本との英語教育特にH・E・パーマー/語学研究所に関する調査については、予定より遅れることになった。また、年度末まで、数度にわたるコロナ感染の拡大やその影響により、国内でのリサーチもできなかったため。 次年度は、コロナ菌の状況の改善あるいは制限解除が見込まれるため、国内でのリサーチや研究会、さらに、英国への渡航と出張が可能になることが期待される。したがって、今年度未使用額を含む予算で、使用する計画である。引き続き海外出張ができないあるいは困難な場合は、オンライン等別のかたちによるインタヴュー、または、別のリソースによるリサーチや分析・解釈をおこなうために、予算を執行する。
|
Research Products
(2 results)