2018 Fiscal Year Research-status Report
エズラ・パウンドの「辺境」意識:その変遷と儒教およびファシズム
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18K00412
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長畑 明利 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90208041)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パウンド / 辺境 / 納西族 / 儒教 / ファシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀に活躍したアメリカのモダニズム詩人エズラ・パウンドの経歴の初期から晩年に至る詩作品のうち、東アジアに題材を得たもの、および、関連する評論、書簡などを取り上げ、(1) それらに現れる彼の「辺境」意識の変遷を明らかにすること、(2) その変遷の意味をパウンドのファシズム支持および儒教への傾倒に照らして解明すること、(3) 彼の辺境意識の変遷を手がかりに、『詩篇』中の「玉座詩篇」および「草稿と断片」に収録された中国雲南省の少数民族「納西族」を題材とする詩篇(「納西詩篇」)を再評価することを目的としている。 2018年度には、パウンドの詩テクストのうち、中国に関連する作品(『キャセイ』、『詩篇』中の「中国詩篇」、「削岩機詩篇」、「草稿と断片」中の中国関連作品)に焦点を当て、それらに見出されるパウンドの「辺境」意識の変遷を、彼の儒教への傾倒との関連から検討する研究を進めた。研究の成果の一部は2019年度に発行が予定されているパウンドを論じる英文論集に収録されることが決まっている。 関連する研究として、パウンドの言語観を、近年注目されている「ポスト・トゥルース」の概念との関連に照らして考察するとともに、1970年代後半以後に活躍したアメリカの前衛詩人たちの言語観と接続する考察を行った。本論考は、2017年度に開催された学会におけるシンポジウム報告に基づくものだが、2018年度に大幅な加筆修正を行い、同学会発行誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従い、パウンドの『キャセイ』、「中国詩篇」、「削岩機詩篇」、「草稿と断片」に含まれる中国関連作品の検討に基づき、彼の辺境意識の変化についての考察をまとめた論考を英文論集に掲載するプロセスを進めたから。
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Strategy for Future Research Activity |
パウンドの詩テクストに現れる彼の辺境意識の変遷についての検討を継続して行う。とりわけ、この観点に基づく考察の重要項目である「納西詩篇」についての研究を進めるとともに、そのソース・テクストである The Ancient Na-khi Kingdom of Southwest China を執筆した Joseph Rock についての研究を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初計画していた研究図書、特に、ジョゼフ・ロック関連図書(古書を含む)の購入ができなかったこと、日程の都合でハーヴァード大学図書館への調査出張ができなかったこと、専門家による知識提供を2019年度に変更したためである。2018年度に購入できなかった研究図書は2019年度に購入し、専門家による知識提供は2019年度に行う。調査出張は2019年度に行う計画であるが、日程の関係で出張できない場合は、2020年度に出張を行う。
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Research Products
(5 results)