2020 Fiscal Year Research-status Report
エズラ・パウンドの「辺境」意識:その変遷と儒教およびファシズム
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18K00412
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長畑 明利 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90208041)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パウンド / 辺境 / 納西族 / 儒教 / ファシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀に活躍したアメリカのモダニズム詩人エズラ・パウンドの経歴の初期から晩年に至る詩作品のうち、東アジアに題材を得たもの、および、関連する評論、書簡などを取り上げ、(1) それらに現れる彼の「辺境」意識の変遷を明らかにすること、(2) その変遷の意味をパウンドのファシズム支持および儒教 への傾倒に照らして解明すること、(3) 彼の辺境意識の変遷を手がかりに、『詩篇』中の「玉座詩篇」および「草稿と断片」に収録された中国雲南省の少数民族「納西族」を題材とする詩篇(「納西詩篇」)を再評価することを目的としている。
2020年度には、前年度から引き続き、パウンドの詩テクストのうち、中国に関連する作品に見出されるパウンドの「辺境」意識の変遷を、彼の儒教への傾倒との関連から検討する研究を進める計画であったが、新型コロナウィルス蔓延に伴い、国内外の移動が困難になったこと、感染防止のためのオンライン授業対応等が必要となったことに伴う多忙化が生じたことなどの理由で、あらたに研究を進展させることが困難となった。そのため、入手済みの文献に基づく調査を部分的に進めるとともに、これまでに行った研究成果を発表するための作業を前年度より継続して行うこととした。その結果、『詩篇』最後のセクションである「草稿と断片」中の「納西詩篇」を、T. S. エリオットの辺境意識と比較検討する考察をまとめた論考が、『T. S. Eliot Review』誌に掲載された。また、直接パウンドを扱うものではないが、アメリカ詩に見られる辺境のモチーフをミシシッピ川との関連から論じた論考が『フォークナー』誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス蔓延に伴い、国内外の移動が困難になったことで、国内外の出張ができなかったため。また、感染防止のためのオンライン授業対応等が必要となったことに伴い、各種業務の多忙化が生じたため。ただし、当初の計画に従い、パウンドの「中国詩篇」、「削岩機詩篇」、「草稿と断片」などに含まれる中国関連作品の検討を行い、彼の辺境意識の変化についての考察を部分的に進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
パウンドの詩テクストに現れる彼の辺境意識の変遷についての検討を継続して行うとともに、「納西詩篇」およびそのソース・テクストである The Ancient Nakhi Kingdom of Southwest China を執筆した Joseph Rock についての研究を進める。2020年度に実施できなかった出張を行う計画であるが、新型コロナウィルスの感染状況によっては中止とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延に伴い、国内外の移動が困難になったため、ハーヴァード大学図書館への調査出張ができなくなり、エズラ・パウンド協会全国大会など、国内外の学会が中止または延期になったため、これらに参加することができなくなった。また、2019、2020年度に購入を計画していた図書の購入については、流通事情の停滞を念頭に、先送りすることとした。このような状況であるため、研究実施期間の1年延長を申請し、認められた。これに伴い、2021年度に、調査出張および成果発表のための出張を行う計画であるが、新型コロナウィルスの影響で実施が困難となった場合は、予算を返却する予定である。また、購入を先延ばしにした研究図書は2021年度に購入する計画である。
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